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市川 亨『障害者福祉ビジネス』(集英社新書)を横山 勲さんが読む

[本を読む]

公共の福祉をむしばむ
「制度ハック」の実態

 人間の尊厳を守るはずの福祉の世界が、底知れぬ資本主義の欲望に飲み込まれていく現実が描かれる。福祉を必要とする障害者や高齢者が、まるで金儲けの「商材」のように扱われている。これをディストピアといわずに何というのか。
 本書が告発するのは、一部の上場企業やそのグループ会社が制度の隙間を突き、利用者の幸せより自らの利益を優先する実態だ。共同通信記者である著者の追及に経営者らは美辞麗句を並べ立て、コンプライアンスの順守を強調する。本書はそのさまを「形式的には合法でも、本質的に間違っている」と喝破する。
「訪問看護もラーメン屋も同じサービス業」とあけすけに語る経営者の本音を著者はつまびらかにする。障害者福祉を「低コストで安定収入のビジネスモデル」とあおり、脱法行為を指南するコンサル会社の存在が取材で暴かれる。世も末だと頭を抱えたくなる。
 しかし事はそう単純ではない。本書に登場する事業者は、時代のニーズを巧みに捉えている。ホスピス型住宅、ペット共生型の障害者グループホーム、精神科訪問看護などだ。他の施設が敬遠しがちな重度の利用者にも門戸を開く。看護や介護に限界を感じる家族や受け皿不足に悩む行政にとって、頼らざるを得ない存在になっている。
 悲しいかな、社会のひずみは最も弱い部分に集まるのが常なのだ。
 行政が性善説に立ち、参入時の審査や事後の監査、第三者評価が機能していない現状がある。悪質な事業者ほど書類を整えることにけ、短期間で異動する行政職員では太刀打ちできない。かといって、監査の安易な外部委託は、行政の責任感をさらに弱めかねない。問題解決は容易ではない。
 良心の呵責かしやくからか、不正を証言する内部協力者が数多く登場することに、殺伐とした心が少しだけ温まる。自らも知的障害のある子の親だという著者は、取材を尽くし、これでもかと実例を挙げて問題の所在を明らかにしようと奮闘する。公共の福祉をむしばむ「制度ハック」に、記者として、父として、ペン一本で立ち向かう姿が頼もしい。

横山 勲

よこやま・つとむ●河北新報記者

『障害者福祉ビジネス 食いものにされる税金と利用者』

市川 亨 著

発売中・集英社新書

定価1,100円(税込)

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