[本を読む]
どんなに野蛮な世界も
美しく見えてくる
互いに身につけておけば、居場所を確認できる。相手への忠誠を誓うという意味では指輪なんかよりリアルに役立つ道具、それがエアタグ。本来鍵や鞄などに付けるものを、恋する二人は純愛の証として互いに肌身離さず携帯する。
主人公のしゅう二五歳、アカリは二〇歳前後。ともに若い。恋する気持ちが高まるほどに危うくもある関係。エアタグで互いの居場所は確認できるのに、相手の態度に不信感が募り、思いがけない展開へ転がっていく。
恋愛至上主義の男女の物語と思いきや、いつのまにか別のテーマが紛れ込んでいく。
アカリとの別れを覚悟したしゅうはバーで出会った謎の女性ミルコに「恋人が死んだんです」と噓をつく。
ミルコの自宅へついていくと、彼女は言う。
「自分がもう死んでしまっているような気がしてならないのよ」
そしてミルコと入れ替わりに現れた夫・タキモトから「妻は死んだ」と告げられたしゅうは混乱する。しゅうとタキモトの「死んだ」は同じ意味なのだろうか。「生」と「死」が奇妙に浮かび上がってくる。
いうなれば恋愛は互いの気持ちと存在を確かめ合う行為だ。互いの心を信じられなくなれば、その価値は薄れる。存在はあるけれど自分の中では消える。これを「死」と呼ぶのか……。
こうも思う。生きているから恋愛する。結果死にたくなるような苦しみを味わう。思い通りにならない感情に人生を揺さぶられて、しゅうは人を傷つけてしまう。恋愛ほど危険な感情はない。
ところで本書には多くの「泡」が登場する。シャンパンの泡だったり、怒りの感情が不意に
中江有里
なかえ・ゆり●俳優、作家、歌手





