[本を読む]
繊細なやさしさに満ちた犯罪小説
主人公のひとり、カーラの高校時代の挿話がいい。ひょんなことから級友のブライアンらとニューヨークへ行くことになった彼女は、大都会の賑やかさと摩天楼の高さに目を回し、一夜だけ冒険して、故郷に戻る。都会に飽きることはあるのだろうかと考えながら。―そんな本筋と関係ないエピソードが心に残るのはいい小説の証拠である。『死体はどうなる』もそのひとつだ。
デビュー作『罪に願いを』で、ロックスバーグという小さな町で罪を犯してしまった三人の男女をめぐる物語を描いたケン・ジャヴォロウスキーは、第二長編である本書でも同じ町、同じスタイルを選んだ。今回の主人公三人はこのような境遇にある。
努力を重ねてMIT(マサチューセッツ工科大学)に合格して町を出た息子から、一年前に自宅の庭に少女の死体を埋めたと告白されたカーラ、母親を死なせたと責められる発達障害の青年リード、どん底の生活の中で続けてきた音楽活動についにチャンスが訪れたリズ。彼らは真面目な善人だが、とことん運に見放されている。それでも彼らは諦めない。
カーラは果たして息子を救えるか。リードはどんな経緯で母親を死なせてしまったのか。無一文に近いリズは町を脱出してプロデューサーが待つ南部にたどりつけるのか。
重く暗くなりそうな物語を、前作同様、ジャヴォロウスキーの筆致はポジティヴさと軽快さを失わずに見事コントロールしてみせる。今作ではコミカルな味とミステリ的な意外性も仕込まれていて、楽しく気持ちよく読み終えることができるのだ。
ところで摩天楼を見たブライアンはどうなったか。彼は決まっていた大学進学を捨ててニューヨークへ移り、やがて消息が絶える。一緒に行こうと誘われたが断って町に残ったカーラは、彼が都会に飽きることがないよう祈る。こういう繊細なやさしさが本書には満ちている。いい小説です。
霜月 蒼
しもつき・あおい●ミステリー評論家





