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瀬川貴次『ぴっかり 光る検非違使退魔帖』を嵯峨景子さんが読む

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視える別当が奔走する平安あやかし譚

 ときは平安。都の治安を守る検非違使(けびいし)たちは、新たに別当(べっとう)として就任した変わり者の上司に、少々手を焼いていた。摂関家の御曹司である輝光(てるみつ)は、検非違使庁の頂点に立つ身でありながら、やたらと現場へしゃしゃり出てくるうえに、死体を見ただけでなぜか犯人を言い当ててみせるのだ。輝光のお守りを押しつけられている判官(ほうがん)の博正(ひろまさ)や、前科者ながら検非違使の下部(しもべ)として働く放免(ほうめん)たちは、血なまぐさくて危険な現場に嬉々として顔を出す、やる気に満ちあふれた若き別当に戸惑いを隠せない。
 実はこの輝光には、他人には言えない秘密があった。これまでは魑魅魍魎(ちみもうりょう)とは無縁で暮らしていたのに、雷に打たれて以来、霊や物(もの)の怪(け)が見えるようになってしまったのである。当初は困惑した輝光だが、持ち前の楽観的な性格でこれを好機と捉え、目覚めた能力を検非違使の任務にいかそうと決意する。別当らしくおとなしくしていてほしいと願う博正の思いをよそに、輝光は殺人の現場に足を運んだり、放免たちとも臆することなく接していくのであった。
 本作は、『ばけもの好む中将』や『鬼舞』などで人気の瀬川貴次が手掛ける、新たな平安あやかしコメディ。貴族らしからぬフレンドリーな性格の輝光を筆頭に、生真面目な年上部下の博正、むさくるしい外見とは裏腹に純情な放免の熊笹(くまざさ)、包容力にあふれた美人妻の明子(あきらこ)など、個性豊かなキャラクターたちが織りなす掛け合いに、くすりと笑わされるだろう。都を騒がす残忍な凶賊を追う中で、輝光は少しずつ部下との距離を縮め、さらなる能力にも目覚めていく。とりわけ心を摑まれたのが、型破りな上司に振り回される不憫な博正で、彼の苦労する姿には思わず同情してしまう。また、過去作ではコミカルかつキュートな付喪神(つくもがみ)の描写が読者を楽しませてくれたが、本作にも愛嬌あふれる古い文箱のあやかしが登場する。鰐(わに)のような四肢と尻尾をもち、輝光のために役立ちたいと奮闘する健気な付喪神の愛らしさにも要注目だ。 

嵯峨景子

さが・けいこ●ライター

『ぴっかり 光る検非違使退魔帖』

瀬川貴次 著

10月26日発売・単行本

本誌連載作品

定価1,980円(税込)

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