[本を読む]
映画への見事な呼応!
読み応えたっぷりの一冊
本書は今秋公開される渡邉直子監督による映画「月がみている」のトリビュートアンソロジーだ。映画の原作は、故渡辺淳一氏の『シャトウルージュ』であり、直子氏は淳一氏の娘である。テーマは「女性の性と生の解放」。
性の解放については、エリカ・ジョング『飛ぶのが怖い』が70年代に出版されて以降、一方的に「される側」だった女性たちが、主体的に「する側」でもあること(当たり前じゃ!)が、じんわりと社会に浸透していった、というのが個人的な印象なのだが、生の解放に関しては、まだまだ石器時代じゃね? とりわけこのジャパン、というのが実感である。
だって、未だに家事育児は基本女の仕事だ、って思われているわけですよ。イクメンという言葉はあっても、イクウィメンという言葉がないのが、その証左。いやいや、うちは家事も育児も完全折半、という家庭もあるとは思いますが、それはイリオモテヤマネコくらいの希少例です。どうぞ、そのままお健やかにご円満に。
本書には、村山由佳さんの「罪の香り」、池田奈津子さんの「残月」、松田志乃ぶさんの「三人婚 メナージュ・ア・トロワ」、そして、桜木紫乃さんの「ドキュメンタリー『母』」が収録されている。どの短編にも、女性という性と生へのリスペクトがあり、そこが素晴らしい。
なかでも、女性の顔の、裏も表も知り尽くした手練れである村山さんと桜木さんが描くヒロインたちの、なんと魅力的なことか。幼い娘を残して出奔した母である尚美を描いた、桜木さんの短編の最後の1行には、がつんと痺れました。
「月がみている」が、平成に書かれた『シャトウルージュ』に対する令和版アンサーとするなら、本書はそのアンサーへの見事な呼応である。ぜひ、ご一読を。





