[本を読む]
心の扉を開く物語
海辺にある街の高台に建つ、築四十年は過ぎた小規模マンション。その建物は細長く、正面に潜水艦のような丸窓が並んでおり、屋上の給水タンクはフクロウに見立ててペイントされている。名取佐和子の新作『ふくろうハイムの扉をひらけば』は、そんな総戸数六世帯の集合住宅が舞台だ。
最初に打ちとけたのは202号室の上田
央次郎には
央次郎の住む世界は狭い。でも、そこにはさまざまな人生模様が詰まっている。それを知ることができたのは、住居それぞれの扉、そしてそこに住む人々の心の扉が開かれたからだ。そして央次郎の心のなかにある、広い世界に向けた扉も少しずつ開かれていく。
読み終えて、心の扉を開く鍵は、自分の弱さと向き合うことだなと思った。大切なことに気づかせてくれる、優しい物語だ。
瀧井朝世
たきい・あさよ●ライター





