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服部孝洋『為替介入とは何か 200兆円規模「外為特会」が生まれた謎』(集英社新書)を竹下隆一郎さんが読む

[本を読む]

経済ニュースの味が変わる教科書

 出版社に怒られそうだが、『為替介入とは何か』という題名を見て、ワクワクする人は多くないだろう。自分には関係がない、と感じるのが普通だ。
 為替介入とは、財務省が「円安や円高が行き過ぎている」と判断したときに、為替市場に介入することを指す。為替レートが動くため、経済ニュースでも大きく取り上げられる。そこまでは多くの人が知っている。そして、何となくの知識でも生活に影響はなさそうに思える。
 しかし、本書を読み終えて思ったのは、この本は為替介入についての単純な書物ではないということだ。財務省のヒエラルキーの構造とは。為替介入で得られた外貨資産を管理する外為特会がいためとつかいとは、どのような「お財布」なのか。金融とは何か。この本を読めば、全てが分かる。本書は、日本という国家のお金の流れを理解して、ビジネスに不可欠な金融を学ぶための「教科書」でもあるのだ。
 私は、料理家・管理栄養士の長谷川あかりさんのレシピ「梅チキンラタトゥイユ」を思い出した。海外の野菜料理であるラタトゥイユに梅干しという組み合わせ。実際に作ってみると、梅干しを使うことで、酸味を味わうことができ、料理全体の輪郭が整えられる。この一品を通して学べるのはラタトゥイユの作り方だけではなく、「味はどう設計されているか」という料理の本質だ。
「梅干し」で料理の見取り図が描かれるように、本書もまた、「為替介入」という一つの視点に立つことで、為替介入、外貨準備、特別会計、官僚の動き方、国際金融の役割が一本の線でつながる。金融の輪郭がハッキリとする。
 著者の服部孝洋氏は東京大学で研究を続ける研究者であり、財務省での勤務経験もある。Ⅹやnoteでも情報発信を行う。本書にはその蓄積が注ぎこまれている。
 ビジネスパーソンの本棚には、ぜひ本書を。梅干しによって料理が引き締まるように、この本が手元にあるだけで、日々の経済ニュースの味わいがきっと変わる。

竹下隆一郎

たけした・りゅういちろう●TBS CROSS DIG with Bloomberg CCO

『為替介入とは何か 200兆円規模「外為特会」が生まれた謎』

服部孝洋 著

発売中・集英社新書

定価1,320円(税込)

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