[本を読む]
人生の最後を
どこで迎えるかという大問題
「ロフトの平野悠が高級老人ホームに入ったらしい」
そう聞いた時、自分の耳を疑った。なぜなら単語として、「平野悠」と「老人ホーム」は、もっとも結びつかないものだからである。
そのデカい声と「ヒャッヒャッヒャッ」という独特の笑い声で数百メートル先にいても「来た!」とわかる平野さん。世界中を放浪し、歴戦の左右活動家からミュージシャン、オタク、文化人、政界や芸能界まで謎の人脈を豊富に持つ人。いつも場の中心で、過激でズケズケとものを言う、老舗ライヴハウスの創業者。
そんな平野さんと出会ったのはもう30年くらい前。当時の私はロフトプラスワンの常連で、この店で新右翼団体・一水会の鈴木邦男や元赤軍派議長の塩見孝也らと出会った。以降、二人に平野さんも加えた濃厚なおじさんたちとやたらとつるみ、2003年にはみんなでイラク戦争直前のバグダッドに行って反戦デモをするという「珍道中」も成し遂げた。
しかし、今や鈴木さんも塩見さんもこの世にいない。イラクで一緒だった頭脳警察のPANTAも、プラスワンによく出ていた宮崎
そうして千葉県の鴨川に建つ新築の高級老人ホームに入居するわけだが、そこは平野悠、「穏やかな余生」となるわけがない。何しろ病気もなくすこぶる健康。他の入居者たちはというと、金持ちのちょっといけすかなかったり訳ありだったりする老人たち。そんな中、YouTube配信をして怒られ、自らの「プチブル性」を問い、友人のアルツハイマーの症状にうろたえる平野さん。鮎川誠や坂本龍一、石原慎太郎の死に打ちのめされもする。
ホームの生活がどうなるかは読んでのお楽しみだが、驚いたのは77歳で「もう一度、胸を締めつけられるような恋がしたい」と悶絶するシーン(しかも複数ある)。
人生100年時代、確かに恋や性は重要なテーマだ。さて、そんな平野さんも80歳を超えた。
ラストには、51歳の私も「負けてられない!」と大いなる勇気をもらったのだった。
雨宮処凛
あまみや・かりん●作家、活動家





