[本を読む]
戦争や原爆から目を逸らそうとする
私たちを導く灯台の明かり
『ルポ 被爆二世』の著者の小山美砂さんにお会いしたのは、私が原爆をモチーフにした小説を上梓した昨年のこと。小山さんは、広島を拠点にずっと原爆被害の取材を続けておられる。その知識の豊富さや意識の高さ、行動力にも感銘を受けたが、若い彼女をここまで突き動かしているものは何なのだろうと、強く思ったものだ。
このたび、小山さんは被爆二世を追ったルポを書かれた。戦後八十年を過ぎ、被爆者の数がどんどん減っている今、被爆者の子どもとしてうまれた被爆二世と向き合うことは、小山さんのライフワークとしては自然な流れだったのかもしれない、などと安易な気持ちで読み始めた自分自身が恥ずかしくなるほど、濃い内容だった。被爆二世の皆さんは、「被爆の影響が遺伝するのではないか」と怯え、差別や偏見にさらされてきた。深い苦悩の中にいる人、「気にしない」と言い放つ人、「寝た子を起こすな」と調査や取材を拒む人。生き方もさまざまだ。彼らと向き合う小山さんもまた苦しみ悩みながら執筆を続ける。自身の中の差別意識を真っすぐに見詰め、取材対象との人間関係に悩み、
私たちは、戦争や原爆から目を逸らそうと思えば、いくらでもそうすることができる。だが、私たちが知らずにいようとも、現実に起こったことは消えることはない。「知る」ことは大事だと『ルポ被爆二世』は教えてくれる。このルポは、私たちを導く灯台の明かりだ。明かりは、過去だけではなく未来をも照射する。よりよい未来は、過去を知ることから始まるのだ。
宇佐美まこと
うさみ・まこと●作家





