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北方謙三『森羅記 三 流星の塵』を細谷正充さんが読む

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元寇へと至る歴史群像ドラマが、いよいよ加速する。

 北方謙三自身が〝最後の長篇〟になるといっている『森羅記』の第三巻が刊行された。元寇を題材にした作品だが、物語はそれ以前から始まる。モンゴル帝国(後に元)、鎌倉幕府、松浦まつら党を始めとする海の民と、大きく分ければ三つの視点でストーリーが進行。ただし本書の「登場人物」を見ると百八人が記されており、多数の人物が入り乱れる歴史群像ドラマになっているのだ。
 その中でも重要な人物が何人かいる。まず、モンゴル帝国のクビライだ。本書で五代皇帝になった彼は、兄弟との戦いを経て、ラストで水軍を造り「海のむこうにあるものも、見てみたい」という。それが元寇へと繫がっていくことは、いうまでもないだろう。起承転結の起が終わり、いよいよ物語が本格的に動き出すようだ。
 もっとも鎌倉幕府の第五代執権だった北条時頼は、早くから国の力を一本化し、外敵に備えようと奮闘。梶原水軍を造るなど、さまざまな手を打っている。元寇のときの執権は、時頼の息子の時宗だが、本書の時点ではまだ世の中を勉強中である。
 そして海の民を代表しているのが、松浦水軍の船頭で、礼忠館れいちゅうかんの船団を指揮しているタケルだ。北条重時から直々に任命され、情報収集もしている。自由な日本人として生きてほしいと思っている人もいるが、タケル本人は自分の道を、まだはっきりと見つけていない。そんな彼が歴史のうねりの中で、いかに成長していくかも、本書の大きな読みどころだ。
 他にも、ある理由から高麗こうらい珍島チンドを護る若狭の波瀬はせ水軍や、クビライの命により新都を建設することになるムスリム商人のアフマドなど、魅力的な人物が次々と現れる。また、タケルと恋敵の木作きづくり(安東)繁安しげやすをまとめて振って女地頭になり、今福船隊を率いる今福満いまふくみつる(満子)を始め、何人かの女性の、積極的な行動も楽しい。大陸と日本を結ぶ、ビッグ・スケールの物語が、どこに行き着くのか。北方歴史小説のファンとして、最後まで見届けたいのである。

細谷正充

ほそや・まさみつ●文芸評論家

『森羅記 三 流星の塵』

北方謙三 著

発売中・単行本

定価2,090円(税込)

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