[本を読む]
資本主義的階層の中上流で生きる
人間たちが無意識に縋る幻影の数々
現代の、と語るとき、空虚、がそこに続くことが多々ある。現代の空虚。バブル崩壊後の焦土に生まれた僕は、むしろ希望や意義に溢れた現代なんてものにお目にかかったことがない。多分だけど、これまでに空虚を一切伴わない現代は存在しなかっただろうし、新しい現代が到来するたび「現代はより空虚になった」と古い現代に棲む人は嘆いてきただろう。その連続というか、永遠に続く緩やかな下り坂みたいなものを描くことは、文学にとっての重要な仕事のひとつであったはずだ。
本作のカメラは、資本主義的階層でいえば中流と上流のあいだに位置し、きわめて都市的な生活を送る人物たちの手に収められている。そして、そのカメラが映すものは数々の幻影、またはファンタジーだ。
現代を生きる当事者たちは、無意識のうちに何らかの幻影に
『関係のないこと』以来の短編集だが、やはり著者の短編は素直に面白い。
麻布競馬場
あざぶけいばじょう●作家





