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齋藤 孝 著、遠藤達哉 漫画・対談『『SPY×FAMILYスパイファミリー』超家族論 ――大人を育てる「子どもの力」』を精神科医さわさんが読む

[本を読む]

「普通の家族」とは何か?
考えるきっかけになる一冊

 本書は、遠藤達哉さんの大人気コミック『SPY×FAMILY』を題材として、教育学者の齋藤孝さんが、「家族とは何であるか」というテーマについて論じています。
『SPY×FAMILY』は、敏腕スパイの黄昏たそがれが、ある目的のため、血のつながりのない他人同士で父・母・娘という「仮初かりそめの」家族を作るところから物語がスタートします。黄昏(仮名・ロイド)はこれまでの任務と同様に難なくミッションをこなせると思っていましたが、子ども(アーニャ)のあらゆる言動は自分の想像をはるかに超えていて、「親」として悩んだり困惑したりする毎日を過ごすことになります。
 私自身、精神科医として日々患者さんに接していると、家族との関係に悩む方ともたくさんお会いします。たとえば親は、子どものことは自分が一番理解していると考えがちです。ところが子どもからすると、「親はぜんぜん分かってくれていない」と感じている場合も多い。特に親側が子どもに入り込みすぎて客観的な視点が保てなくなると、どこまでが子どもの問題でどこからが親の不安なのかが分からなくなる。自他の境界(バウンダリー)が曖昧になることは双方の苦しさ、生きづらさにつながります。
 ロイド(父)とヨル(母)は、「普通の親」「普通の家族」にならなければ(周囲からそう見えなければ)と奮闘しますが、この「普通」については、コミックの中でも疑問が投げかけられますし、また本書の著者齋藤さんも、「普通なんて幻のようなもの」と指摘しています。実際にも、完璧な親なんていないのに、幻の理想像にとらわれてしまっている方も多いのではないでしょうか。
『SPY×FAMILY』は、大人と子どものかかわりが、あらゆるパターンで詰まっている作品だと思います。本書はそれを丁寧に読み解きながら、大人も子どもも生きやすくなるさまざまなヒントを与えてくれます。

精神科医さわ

せいしんかい・さわ●医師

『『SPY×FAMILY』超家族論―大人を育てる「子どもの力」』

齋藤 孝 著/遠藤達哉 漫画・対談

発売中・単行本

定価1,870円(税込)

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