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佐藤賢一
NHKスペシャル「戦国」取材班/山崎啓明『戦国日本VSヨーロッパ グローバルヒストリーで読み解く信長・秀吉・家康の対外戦略』(集英社新書)を佐藤賢一さんが読む

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手垢がついた歴史が、キラキラの新品に蘇った

 グローバルヒストリーという新潮流、すなわち「地球規模で歴史を俯瞰することで、日本史やヨーロッパ史という垣根を乗り越えよう」とする試み、これに即して制作された「NHKスペシャル」が、いくつかある。テレビ番組の書籍化も『新・幕末史 グローバルヒストリーで読み解く列強vs.日本』(幻冬舎、二〇二四年)、『新・古代史 グローバル・ヒストリーで迫る邪馬台国、ヤマト王権』(NHK出版、二〇二五年)となされて、続く第三弾が、本書である。長篠の戦い、本能寺の変、山崎の戦い、関ヶ原の戦い、大坂の陣と、これぞ日本の戦国史というような出来事が、グローバルヒストリーの視点から捉えなおされる─といって、実際どうなのか。
 世界史のなかの日本史が提唱され、大学入試の問題まで変わる昨今ながら、これまでは正直ピンと来るものがなかった。それが本書を読むと、おっと思うような件が随所にあったのだ。
 例えば豊臣秀吉の朝鮮出兵─そう呼ばれ、実際の戦いも朝鮮半島だったが、秀吉としては「唐入り」のつもり、つまりは中国の征服だったことは知られている。誇大妄想を膨らませたものだと呆れるが、同じような妄想を抱いた男が他にもいた。スペイン王フェリペ二世だ。ヨーロッパの本国に加えて、アメリカ大陸、さらにアジア各地にも領土を拡げ、「日の沈まぬ帝国」を支配した王だが、果ての野望が中国の征服だった。この思惑と正面衝突したのが、秀吉の朝鮮出兵=唐入りだったのだ。フェリペが侵攻の足場に用いようとしたのが、スペイン領フィリピンだったが、そこにも秀吉は降伏を勧告している。挑戦状を叩きつけた格好で、フェリペが引かなければ、もう東西の覇王による世界戦争だった。
 一五九八年に二人とも死んだので、危機は何とか回避されたが、いずれにせよ、そんな図式で世界は動いていたのかと驚かされた。同時に手垢がついた歴史が、キラキラの新品に蘇ったように感じられた。これがグローバルヒストリーかと、感嘆した所以である。

佐藤賢一

さとう・けんいち●作家

『戦国日本vsヨーロッパ グローバルヒストリーで読み解く信長・秀吉・家康の対外戦略』

NHKスペシャル「戦国」取材班/山崎啓明 著

発売中・集英社新書

定価1,133円(税込)

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