[本を読む]
科学史の立場から見た日本人論
歴史の教科書に載っているのは、法律や戦争や条約の名前ばかりだ。もちろん、これらなくして今の世の中はないから、覚えておくべき大切なことだ。だがもっと他にも、重要なことは起きていたのではないだろうか。
物理学者ファインマンは、その有名な講義録の中で「もし一万年後に人類史を振り返ったら、十九世紀で最も重要な出来事はまず間違いなく、マクスウェルによる電磁気学の法則の発見とされるだろう」と述べている。確かに、もし電磁気学がなければ、今も人類は馬車と蒸気船で移動しているだろうし、都市の形も戦争の規模も実際と全く違ったものになっていただろう。
そう考えると、これまで語られてきた歴史では、多くの場合科学技術分野に関する記述が大きく欠落しているように思える。何十万人が参加した戦争や、数百年続いた王朝の交代よりも、たったひとつの小さな道具の発明の方が、より大きく歴史を動かしているかもしれないというのに。
本書は、まさにこの点を埋めてくれる一冊だ。食品やトイレなど極めて身近なものから、インターネットやLEDなどのテクノロジーに至るまで、これらがいかに発展してきたか、それを支えるサイエンスはどんなものなのか、そしてどんな人々がそれらを生み出したのか、わかりやすく解説されている。取り上げられた話題の幅広さは、コンパクトな新書一冊と思えぬほどだ。
たとえば電池の歴史は、ボルタの発明した
こうして日本人の特質を考えることは、この国の先行きを考える上で欠かせない事柄だろう。本書は日本から見た科学史の本であると同時に、科学史の立場から見た日本人論でもある。
佐藤健太郎
さとう・けんたろう●サイエンスライター





