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中国で絶大な人気を誇る若手実力派が描く、現代女性の悲哀と絶望
中国ではリーという音がよくある女性の名前リストの常連なのだそうだ。彼女たちはまた同じ字を重ねるかたちで呼ばれることが多い。適当なマンションの前に立って大声でリーリーと呼べば誰かが返事をする有様だという。
例えば、養親に遠慮して「座席なし」の切符しか手に入れられないまま春節の帰省ラッシュの長距離列車に二十四時間以上も押し込められることになった女子大学生・立立の顚末(「ただ座りたいだけなのに」)。彼女の背後には儒教に根差した家父長制規範と一人っ子政策の影があり、文字どおりすし詰めの列車内の様相は急速な市場化が進んだ1990年代後半当時の中国社会の縮図だ。
他にも、方言の飛び交うタクシーの車内があり、常連ばかりが集う公営プールがあり、どこも似たり寄ったりの台所があってショッピングセンターがある。そこには、母親が再婚相手と暮らす家でふいに生理となってしまい狼狽する娘がいて、仕事帰りの自分にとって唯一の息抜きといえる場所で痴漢に遭う女性がいる。妊娠・出産と引き替えにそれまでのアイデンティティが剝奪されていく過程に心身を病んでいく若い妻がいれば、息子を失ったことで社会の周縁へとはじきだされてしまった母親がいる。作中の言葉を借りるなら、〈病気が同じでも痛みはみんな違う〉のだ。
本作は中国最大の読書サイト「
倉本さおり
くらもと・さおり●書評家





