[本を読む]
応答と発信
『詩人S 谷川俊太郎単行本未収録詩集』は、二〇二四年一一月に亡くなった詩人・谷川俊太郎氏の、単行本化された自身の詩集には収録されていない詩八四編を収める。
収録作は、発表された時期も媒体も多様である。最も古いものは、一九四八年、著者の高校時代に発行された「豊多摩」復刊第二號(都立豊多摩高等学校文芸部)に掲載された「つばめ」。〈ループイムメルマンターン ダイヴ…/美しい線を画いて楽しげに全く楽しげに/飛び交ふつばめ〉とはじまる本作は、このあとに刊行される第一詩集『二十億光年の孤独』(一九五二)にもつながる清新さを持ち、当時の空気に混在する新旧の香りと鮮明さを感じさせるとともに、生命に対するまなざしや捉え方、それらをシンプルな言葉でかろやかに描くなど、のちの著者の特色をすでに備えたものとして注目される。
また本書には、著者が翻訳を手がけたことでゆかりのある「スヌーピー展」をはじめ、さまざまな展覧会やイベント、雑誌や共著、他者の作品に対してなど、折折の機会や対象に寄せて書かれた詩が数多く収録されている。表題作「詩人S」は、映画『谷川さん、詩をひとつ作ってください。』(二〇一四)のための書き下ろし。著者本人を思わせる〈詩人S〉のあり方が滲む最終部が心に残る。〈情報でも意見でも説明でもないコトバ/自己
職業としてまた一個人として、公的にも私的にも、長きにわたり詩人として応答し発信した。その多彩な活動のなかで数多く生まれ、読まれてきた作品群に、新たなこの一冊が加わった。詩が寄せられた対象にも想いを馳せながら、それらと合わせて読む楽しみももたらされた。

日和聡子
ひわ・さとこ●詩人、小説家





