[本を読む]
お母さんへ
あなたがいなくなって、まもなく十年になります。きちんと悲しむ時間と向き合えないまま、当時三歳だった息子の育児と仕事の忙しさで寂しい気持ちを紛らわせ、私は母のいない時間を生きてきました。そしてお父さんを見送るまでの年月は、私の命を削る時間でした。
今はきっと同じ世界で一緒に幸せに過ごせているのだと思います。
あなたがいなくなってからの時間も、変わらずたくましく生きています。
私の生まれ育った佐賀の実家は、気づいた時には「帰る場所」ではなく「片付けられない場所」になっていました。母の部屋に残された思い出を前にするといつも立ち止まってしまいます。
その中で見つけたのは、母宛に届いた友人からの手紙。そこには、母がどれほど人に愛されていたかが、静かに、しかし確かに残されていました。文字には、その人の温度が宿る。残された私は、その温もりに救われた気がします。欲を言えば、私も母の文字の温もりを受け取りたかった。
その想いを抱えたまま、私は『タイムレター』というこの本の構想に出会いました。著者の
もし、自分の言葉を、自分の文字で、愛する人の未来に残せたなら。愛する人が人生に立ち止まりそうなとき、そっと背中を押してあげられる存在になるのではないだろうか。
この本は、時空を超えて想いを残す装置です。今はまだ伝えられなくても、言葉は未来で誰かを支えるかもしれない。そう信じられるようになることが、本書を〝読む/作る〟という体験です。
私が母に宛てたこの気持ちも、いつか息子へとつながっていって欲しい。
届かなかった言葉が、時間を経て想いとなり、次の世代へと受け渡されていく。『タイムレター』は、その想いにそっと寄り添ってくれる温かな本です。
光野あや
みつの・あや●AMCC代表、佐賀県企業誘致アドバイザー





