[本を読む]
中村哲という大河を源流まで遡る、驚くべき本格的評伝
北九州市若松区白山の
「外孫の哲」とは、葦平の妹秀子の長子、中村哲。確かに似ている。ずんぐりとした風貌も、確としたまなざしも。そして、中村の決断と行動の背後には、伯父葦平が『花と龍』に描いた祖父金五郎親分の影が
戦乱に荒廃し、どの家にも火器があるようなアフガニスタンで、「丸腰が一番強いのだ」と言い切り、事業に邁進した中村哲は、歩く憲法九条であると同時に
山岡淳一郎『炎と水 中村哲と名もなき人たちの旅』。
著者には、徳洲会を築いた徳田虎雄の評伝(『神になりたかった男 徳田虎雄』平凡社、二〇一七年)があるが、今作の冒頭近くにこの徳田が出てくる。はて、と首を傾げて読み進めると、徳田と中村の接点が明らかになる。これには驚かされた。そしてこの伏線は、二人の医師を対照させたあとがきでみごとに回収されるのだ。その読後のカタルシスたるや。
自身はあまり語らなかった学生時代を含め、中村をめぐる群像が
池田香代子
いけだ・かよこ●ドイツ文学翻訳家





