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桐野夏生、金平茂紀、ドリアン助川ほか・著 日本ペンクラブ・編『原発回帰を考える 3.11から15年目の大転換』(集英社新書)を畠山澄子さんが読む

[本を読む]

「核の問題」について自分事として考えてほしい

 易しいテーマではないのにページをめくる手が止まらない。核をめぐる課題と問いが、あるべき場所に収まっていくような快感をおぼえた。
『原発回帰を考える』との題だが、扱うのは広く「核」だ。ウラン採掘から原爆投下、核実験、そして原発事故に至るまで、核が人間と自然に及ぼす取り返しのつかない被害が浮かび上がる。これらを歴史的文脈や構造的暴力と結びつける「環境レイシズム」や「核植民地主義」といった概念が出てくるところも重要だ。
 しかし、いまあらわになりつつあるのは、そのような被害をなかったことにしようとする「核権力の思惑」だ。福島では、被災者が本当の心を言葉にできないうちに国が「福島版ショック・ドクトリン」ともなぞられる動きを粛々と進め、いつの間にか軍事開発につながりかねない国立研究所が「世界一」「人集め」などといった言葉とセットでつくられている。
 追い打ちをかけるように進むのが本書の主題でもある原発回帰だ。経済産業省の第7次エネルギー基本計画では「可能な限り原子力発電への依存度を低減する」との文言が消え、「原子力を(中略)最大限活用する」との方針が示された。ただし、本書で明快に示されるように、それは必要性・合理性の両面から不透明さが残るものであるし、そもそも政府は原発推進・反対にかかわらず重要な核のゴミの問題、そして福島第一原発の廃炉の問題とも向き合っていない。核燃料サイクルが未完であるという根本的な問題も無視できない。
 私たちは目を覚まし、今一度自分たちに引き寄せて核の問題を考える必要がある。本書を読めばヒントはたくさんある。忘却という暴力に自分たちを明け渡さないこと、自分たちのプロフェッション(職業)の中でできることを探し行動すること。見渡せば、政治家や自衛隊幹部の中にだって原発回帰を危惧する声は少なくない。
 多くの人に本書を手にし、原発回帰の流れに抗う言葉を見つけてほしい。そして、言葉を行動に繫げていきたい。

畠山澄子

はたけやま・すみこ●ピースボート共同代表

『原発回帰を考える 3・11から15年目の大転換』

桐野夏生、金平茂紀、ドリアン助川ほか 著

発売中・集英社新書

定価1,210円(税込)

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