[本を読む]
星々をつなぐ見えない想い
星座に疎くても、オリオン座はわかる。夜空を見上げるとオリオン座を探しがちなひとは、一定数いるはずだ。星座を見つけられるのは、星々を結びつけた完成形を知っているからに他ならない。しかし、星々のあいだには本来、線など引かれていない。私たちは見えない線を、どのように見ているのだろう?
二〇二五年二月末から一時休館している帝国劇場を舞台にした本作は、長きにわたる劇場の歴史を駆け抜ける八本の短編が収録されている。そして主に登場するのは舞台にあがって名を残す役者の面面
そして本作では帝国劇場の舞台を、暗闇に浮かぶ美しい星座に見立てる。夜空に浮かんでいるすでに消滅した星々の光—過去にいた生き物たち—を舞台のうえで再現するのが役者。そして役者を裏で支えている多くのひとたちの「想い」が、星座をつくる見えない線を担っているのだ。見えない「想い」をつなぐことで観客の心を震わせる演劇を見せ、歴史を紡いできた—だからこそ帝国劇場には「想い」によってうまれた、人間とは異なる存在もときに集う。現実と非現実のあいだに連れていかれるような読み味は作者の持ち味であり、演劇をみるときの、あるいは星座を眺めているときの心地にも似ている。
それだけではない。八つの物語を通じて見えない線を見ようとする本作は、作者をはじめ多くの出版関係者の帝国劇場への「想い」をつないでうまれている。だからこの本自体がひとつの星座にもなっているのだ。八つの星をつないで完成した見事な星座に、ぜひ見惚れてほしい。
あわい・ゆき●書評家、ライター





