[本を読む]
耳を澄まし、言葉に隠された「神の声」を聞く
言葉とは元来が息で、音となった声は風に消えてゆく。石器や土器などとは違い、土の中で後々まで保存されるものではない。だが例えば地名のように、土に声で記された神の言(「神語」)を、もともとは外国語で表記された文献語であるヤマトコトバの重なり合った層をはがして、考古学のような作業で発掘してゆき、そこに隠された声を聞き取るのが木村の本領なのであるが、それはしかし考古学者というよりは、むしろ神の声に耳を澄まし、それをわれわれに伝えてくれる巫女の姿を彷彿とさせるものがある。その巫女が、神の名そのものを語ろうとするのが本書『神さまたちの由来 日本「多神信心」のみなもと』なのだ。
記紀神話から平安仏教に至るまでを扱う本書であるが、木村の
そうした「教義など皆無に等しい実態だった」神々の国では、やはり多神教である仏教にしろ陰陽道にしろ、教義の対立・反発など起こりえずして流入定着するのである。そしてあまたの新興宗教がさきわうこの国には、現在に至るも「列島土着の神的感性」が根強く残っているのだという。
言葉や音から歴史・文化を読み解く木村の手際の良さを目にすると、いつも自分でも日本の昔物語を読み返してみたくなるのだが、この本もまたその例に漏れない。
佐復秀樹
さまた・ひでき●翻訳家





