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平田オリザ『寂しさへの処方箋 芸術は社会的孤立を救うか』(集英社新書)を鈴木大裕さんが読む

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閉塞感漂う日本社会に小さな風穴をあけるには

 世の中全体が、より世知辛く、不寛容で、攻撃的になっている。どこかみな憂鬱で、ストレスを溜め、ふとした瞬間にそれが噴き出す。「いったい何が不満なのか? いったい何に『日本人』はいらついているのか?」
 本書は、その原因探しから始まる。平田氏は、それを「日本と日本人独特の寂しさ」に見出している。生きてはいけるが、物価が上がり賃金は上がらず、人生を謳歌する金も時間もない。何よりも、将来に希望が持てない。戦後、急激な経済成長で先進国の仲間入りをした日本。その住人たちは、成長の止まった自分たちを追い上げる新興国への危機感と、先進国のプライドと、昔は良かったというノスタルジーに苦しめられている。
 本書は、劇作家である著者が、日本社会をむしばむそんな「寂しさ」という病理と向き合い、「小さな処方箋」を提唱する試みである。
 本書を通して、読者は様々な問いと向き合うことになる。人が、単なる生命体としてではなく、人間らしく生きるとはどういうことか? 都市部の、利益目的だけの希薄な共同体と、人間関係の濃すぎる田舎の共同体に代わり得るコミュニティとは? 人口減少と経済の縮小に歯止めがかからない、「寂しさ」に包まれたこの国で、芸術の果たせる役割とは何なのだろうか?
 平田氏は言う。「ここ豊岡、但馬にオンリーワンの成功例を作ることで、閉塞感漂う日本社会に小さな風穴をあけたいのだ。そして、少しでも風通しのいい日本社会を作りたい」。これは、高知県土佐町という人口3500人弱の中山間地域で、オンリーワンの教育を目指す教育研究者、そして町議会議員として、私も強く共有する思いである。
「あそび」のないところから新しい世界は生まれない。年々過密になり、やり切った感満載の都会から変化の兆しが生まれるとは、私には思えない。土地も資源も、力を持て余している田舎において、経済的合理性追求の陰でないがしろにされてきた芸術や、これから大人になっていく子どもたちの教育を通して、この息苦しい社会の「あそび」となる空間を各地につくり、それらをつなげ、広げていくことに、希望を見出したい。

鈴木大裕

すずき・だいゆう●教育研究者・土佐町議会議員

『寂しさへの処方箋 芸術は社会的孤立を救うか』

平田オリザ 著

発売中・集英社新書

本誌連載作品

定価1,056円(税込)

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