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運命としての未来に抗う書
未来に対する不安。不確実性の時代に生きている私たちは、未来を漠然とした不安としてしか触知できない。それは何かはよくわからないけど既に決定されており、ある日(だがそれはいつの日だ?)、突然私たちを大波のように
一言でいえば、本書は右のような「未来観」、言い換えれば未来をめぐるイデオロギー的布置に対する力強い抵抗として書かれている。本書のメッセージは次のテーゼに要約される。「未来は予測されるものではなく、創造されるべきものである」。このテーゼは、著者の二〇二一年の著作『未来は予測するものではなく創造するものである』の主張を引き継ぐものだ。著者の考えは一貫しており、その意味において信頼に値する。
著者は「未来は単一である」という未来像に異議を唱える。未来は複数存在しており、しかも開かれている。誰に対して?―私たちに対して。イーロン・マスクのような一部の億万長者や権力者だけが未来を決定できる。そのような考えを著者は
未来を考えるための土台、すなわち、加速主義、プルラリティ、未来学、SFプロトタイピング……。それらに共通するのは「未来というテクストの解釈と再記述」をめぐる絶えざる格闘だ。それを通じて固定化された未来像を多元性の領野へと、未だ記述されたことのない未知の領野へと解き放つ。複数のオルタナティブを吟味し、私たちにとっての「望ましい未来」を選び取るための想像力=創造力。それは、「運命としての未来」に抗うことによってしか培われることはない。
木澤佐登志
きざわ・さとし●文筆家





