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森平雅彦 編『朝鮮の王朝外交 〝ややこしさ〟からの気づき』(集英社新書)を姜尚中さんが読む

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朝鮮史研究のニュー・ウェーブ

「鯨の喧嘩にエビの背中がれる」。
 世界有数の大国に囲繞いにようされた朝鮮の地政学的な「宿命」を表したクリシェ(常套文句)である。中国を中心とする冊封さくほう体制の中でかろうじてその存続を許されてきた弱小国家、朝鮮。そして頑迷固陋がんめいころうにして「事大主義」に毒され、独立の気概も力量もない哀れな「属国」、朝鮮。これが、征韓論以降、特に「韓国併合」以後、「旧宗主国」日本の国民の意識に根付いた隣国のイメージではないか。
 さすがに植民地解放以後、戦後歴史学の新たな展開とともに、そうしたイメージは色褪せるようになった。それでも、こうしたイメージの眼鏡で古代史から中世、さらに近世に至る朝鮮半島の歴史を眺める歴史観は廃れているとは思えない。
 ただ、現在では、分断国家とはいえ、韓国はテクノロジーとポピュラーカルチャーのパワーハウスのひとつになり、また事実上の核兵器保有国になった北朝鮮は、侮れない脅威となりつつある。
 このように、明らかに朝鮮半島は、大国に翻弄されるエビにとどまらず、鯨の間を動き回る「イルカ」ほどの力を持ちつつあるのだ。もし、いい意味でも、悪い意味でも、それを小国の固有の個性とするならば、朝鮮の歴史も違って見えるに違いない。
 本書はまさしくそうした「小国主義」のタフな知恵と狡知に着目しつつ、古代・高麗時代・朝鮮時代を、「この時代はここが特徴的で面白い!」と言えるトピックを時系列的に追った出色の朝鮮通史である。
 新書サイズなのに、深掘りされた専門的な研究の知見に満ち、それでいてまるで韓国時代劇ドラマを見るようなワクワク感のする本書に脱帽である。1970年代と1980年代生まれの新進気鋭の研究者たちによる朝鮮史研究のニュー・ウェーブの誕生を心から祝したい。

姜尚中

カン・サンジュン●政治学者

『朝鮮の王朝外交 〝ややこしさ〟からの気づき』

森平雅彦 編

発売中・集英社新書

定価1,166円(税込)

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