[本を読む]
権力に物申す、勇気の人
森永卓郎さんは、死の間際まで、仕事に情熱を燃やしていた方でした。
『サンデー毎日』の対談で、「なぜ、病気なのに、そこまで働こうとするんですか」と聞いた時、「私は、〝あの世〟って存在しないと思っている。神も仏もいないし、あの世も存在しない。あるのは現世だけ。だから、この現世をいかにフルスイングで前のめりで生きるかっていうのが常にテーマなんです」と語ってくれました。
それは、死の5日前に、Zoomで行った45分ほどの対談での言葉でした。痛みを堪えながらフルスイングで話を止めようとしない森永さんに、胸が詰まる思いがしました。
森永卓郎さんは、唯一無二、さまざまな顔を持つ不思議な方でした。
大好きなミニカーのことを話す時の子供のように嬉しそうな顔。経済のことを話す時の、真剣な顔。権力者と呼ばれる人たちに徹底的に歯向かう時の怒った顔。テレビのバラエティーなどで、いじられキャラに徹した時の庶民的な顔。
そんな森永さんが多くの人に好かれるのは、さまざまな顔の向こうに、一貫して特権階級に属さず、権力に媚びず、隣人の幸せを望み、自分が自由に生きることを望み、自分と周囲の人たちが平和でより良く生きられるような社会にしたいという願いを全力で実現させようとする思いが垣間見えるからでしょう。
そのためには、フルスイングで物申す。それは、本書に収められた2010年代を中心とする論説でも変わりません。たとえば、「ファシズムはたいていの場合、正しいところから始まるのであり、民衆の熱狂が育てていく。ファシズムを防止できるのは、多様な意見の存在だ」という言葉があります。みんなが熱狂して同じ方向を向いても、自分がそれをおかしいと思うなら、真正面から物申す。多様な意見を聞けという。また、繰り返し強調されている消費税率引き下げの主張は、ベストセラーとなった著書『ザイム真理教』の原点でもあります。
こうした正論を堂々と語るには、勇気が必要。その勇気を、森永さんはこの本を通して残してくれました。森永さんの勇気を随所に感じられる本書は、何度も読み返す価値のある一冊です。
荻原博子
おぎわら・ひろこ●経済評論家





