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地域おこしへの問題提起の書
「足下を掘れ そこに泉が湧く」とニーチェは言ったが、文化によるまちおこしは足下を掘る運動だろう。しかし、それはいつも成功するわけではない。その数少ない成功例の「自由の森大学」の軌跡を著者は掘りおこした。そのために著者は三人の主人公を設定した。筑紫哲也、原田啓介、渋谷正芳である。
筑紫の故郷の大分県
筑紫は左利きだった。それが自らを「少数派」だと意識させ、容易に多数派つまりは体制派に従わない気質をつくる。私は日田市が二〇〇一年に別府競輪の場外車券売り場「サテライト日田」の設置許可の無効確認と取り消しを求めて国を提訴した件に注目した。日田市は設置許可が憲法が謳う「地方自治の本旨」に基づく「まちづくり権」を侵害すると訴えたのである。その訴訟の弁護団長の寺井一弘を筑紫は当時の日田市長に紹介した。この訴訟と自由の森大学運動は連動しているだろう。地域おこしとは何か、文化とは何かを考えているから、こうした動きが出てきたのだと私は思う。
各地の市民大学とはケタ違いの多くの参加者を集めた自由の森大学を支えた原田や渋谷の苦労は並大抵のものではない。それらを活写しながら、著者は地域に於ける文化運動の可能性を探っている。惰性で続けなかったのもいい。
筑紫は「きちっと終わろう」と言い、二〇〇六年、十二年の活動に終止符を打った。「それぞれの地元に帰り、そこでどう花を咲かせ実らせるのか」と続けた筑紫の言葉に象徴されるように、これは新たなる問題提起の本である。
佐高 信
さたか・まこと●評論家





