[本を読む]
幸福とは何かを知りたい人に、読んでほしい物語。
まるで物語の世界に
古い体質の残る会社で、経理部のチームリーダーをしている金井綾乃は、東小金井にある
そんな徳子が、九十歳の記念に晩餐会を開くことにした。晩餐会の準備を手伝っているうちに綾乃は、さらに深く徳子の人生を知ることになるのだった。
本書の主人公は綾乃と徳子だが、金井家の他の家族についても随所で描かれていく。縁あって会社の社長になった綾乃の弟の晴明を始め、家族にだってそれぞれの人生がある。作者は波風の立つようなエピソードは極力抑えて、金井家の平凡で幸せな姿を表現していくのである。
その幸せが頂点に達するのが、晩餐会の場面だ。十六歳のときに短刀で自害しようとしたこともある徳子が、長き歳月を経てたどり着いた境地。なぜ彼女は晩餐会を開いたのか。その理由が語られたとき、幸せの形と人の心の美しさが露わになる。泣きたくなるほど温かな祝祭空間を、気持ちよく表現した作者に感謝するしかない。
さらに、四合院造りの家の持ち主である三沢
細谷正充
ほそや・まさみつ●文芸評論家





