[本を読む]
のびのびと前を向いて本をつくる
「ころから」という小さな出版社が東京都北区の片隅で創業したのは2013年。たった三人のメンバーで始まり、いまもその三人で運営されている。関東大震災直後の朝鮮人虐殺についての入門書として名高い『九月、東京の路上で』(加藤直樹著)や、
本書は、ころからの代表・木瀬貴吉さんが綴った「わずか三人の出版社の闘いの記録」だ。ご本人がまえがきにそう書いているのだけど、この「闘い」はまなじりを決して突撃するようなものではなく、といってデスクに齧り付いて文献と格闘する類のものでもない。権威に頼ることなく、「へぇ、そうだったのか」とか「どうしよう、困った」などとブツブツ言いながら、三人で考え込んだり、引き返したりして約80点を刊行してきた記録。その絶妙な進み方が、読んでいてとても心地いい。ヘイトに
じつは木瀬さんとわたしはフットサル友だち。かつて同じ弱小チームに所属していた。木瀬さんのボールさばきは素直だ。敵を
金井真紀
かない・まき●文筆家、イラストレーター





