[本を読む]
語りの節々ににじみ出ている
著者たちの怒りや興奮が刺さる
男らしさの問題を語ることには難しさがつきまとう。特権性や加害性を反省しても、生きづらさがあると訴えても、同性間の関係性を描写しても、交差する問題と重ね合わせて論じても、方々から様々な批判やツッコミが飛んでくる。最も声を届けたい層に届かなかったり、最も怒られたくない層から怒られたりすることもざらだ。だからとてもじりじりするし、ときに「極端なことを言ってバズりたい」という欲望にもかられる。そういう中にあって、「名著に学ぶ」というスタイルは一種の発明だと思った。めちゃくちゃ硬派でエキサイティングだった。
元保育士の天野
トーンは慎重かつ真面目で、全体的に誠実な本という印象だ。しかし個人的には、語り合いの節々ににじみ出る著者たちの怒りや興奮がすごく刺さった。名著の先見性に痺れ、個々の問題意識が結びつき、思いもよらなかった方向に話が展開していく。発見と再確認、内省に憤り、ケアや共感……こんな語り方があったんだ。4人の専門家が学びと揺らぎの中で展開していく本書は、男性学の入門書としてとびきり頼もしい。
清田隆之
きよた・たかゆき●文筆家、「桃山商事」代表