[本を読む]
再発見の喜びを誘う
よく知られる名編を集めたアンソロジーとは、ちょっと違う。
谷川俊太郎という比類なく多産で、長命を全うした詩人のすべての年代の詩集から、数々の代表作はもとより、無名の詩までを丁寧に採集した独自の「ベスト190」は、新鮮で起伏に富んでいる。
ソネット(十四行詩)を得意とし、「10行以内の詩だけでも数百編ある」(巻末解説)という谷川の、15行以内の作品ばかりが選ばれているのだが、あらためて一つずつ、てのひらに乗せるようにしげしげと眺めていくと、「やっぱり、いいな」「すごくいい」「え、こんなのがあったんだ!」「記憶しておきたい」……と発見は尽きず、時間を忘れて味読してしまう。
通底するのは無限の宇宙、永劫の自然、それに対して有限の時間の中の、今この一瞬にたたずむ人間のさびしさ、かなしみ。だからこそいっそう輝く、生きて在るよろこび、だろうか。谷川はじつに70年以上も、そのポエジーを自在に言葉にしつづけた。
『六十二のソネット』(1953年)中の「1 木蔭」で、「とまれ喜びが今日に住む/若い
選者の
尾崎真理子
おざき・まりこ●文芸評論家