[本を読む]
宮殿の「三要素」を知っているかい?
東大寺の大仏が好きで毎年、最低一回は東京方面から奈良に向かう。で、難波から乗った近鉄電車が
こういうことを含め、わが国の
そもそも、古代における宮殿とは何か。本書は語る。それは天皇を中心とした国家を形成するため、その権威を示すべく造られてきたものであると。理想の形を目指し、ヤマトの時代から推古女帝と摂政聖徳太子の飛鳥時代、天智・天武朝の時代、藤原京から平城京、そして平安京へと、さまざまな宮殿が築かれた。その道程は唐に
有り難いのは古代の各宮殿がどうあったのか、それがよくわかる図面等が本書には多く載っていることだ。また単なる古代宮殿の建築史の書ではなく、当時の歴史の流れが要所に記されていて、宮殿が辿ってきた道を知る上で参考になる。本書は古代宮殿史を含んだ日本古代史の一冊でもある、といったところか。各方面にわたる著者の深い知識がわかる新書である。
桜井俊彰
さくらい・としあき●歴史家・エッセイスト