[連載]
集英社オレンジ文庫10周年記念企画
柑橘の文字をかじる
⑨桑原水菜 著
『荒野は群青に染まりて 暁闇編』
酸素不足になったようだ。
私の口がいまだに小学生のそれならば、気がつかぬうちによだれが垂れていたかもしれない(恥ずかしながら、小学校低学年の頃は、集中しすぎて、漢字ドリルによだれが垂れそうになったことがしばしばあった)。
本作は、太平洋戦争に敗れ、引揚船で朝鮮から日本に渡ってきた身寄りのない少年・
戦後80年を迎えた今年。若輩者である私は、戦中・戦後を自分の肌では知らない。しかし、本作が戦後の世の中を生き抜く少年の物語であるという前情報から、普段読書をするとき以上に、キリリと背筋が伸びるのを感じた。それで良い。
息を詰めて、一文一文と向き合っていた。
緊張していた。物語にピンと張り詰めた空気が、私の呼吸を奪っていった。特に、群青が、唯一の肉親であった母を殺した疑いがある赤城と、まだ混乱の中にある戦後の日本を生きることになるまでの流れ。母を失った悲しみ、仇敵に向けられる怒り、それでも赤城がいなければ生きられないもどかしさ、物語に充満する混沌とした世の中の雰囲気。
全てが私を包み込む。息苦しい。(抜粋)
集英社オレンジ文庫10周年アンバサダー・大友花恋さんによる作品紹介の続きは、公式HPに掲載。ぜひ、ご覧ください。
https://orangebunko.shueisha.co.jp/book/kankitsu_no_moji
大友花恋
おおとも・かれん●1999年10⽉9⽇⽣まれ、群⾺県出⾝。
雑誌「Seventeen」で専属モデルを務め、現在は「MORE」専属モデルとして活動中。「今⽇、好きになりました。」(ABEMA)ではレギュラー⾒届け⼈を務める。近年はドラマ「正しい恋の始めかた」(EX系/2023年)で主演を務め、ドラマ「フィクサーSeason3」(WOWOW/2023年)、「トークサバイバー2」(Netflix/2023年)、「厨房のありす」(NTV系/2024年)などに出演。