[連載]
集英社オレンジ文庫10周年記念企画
柑橋の文字をかじる
⑤羽良ゆき 著
『ハンティングエリア ~船上の追跡者~』
手が震えていることに気がついた。それだけではない。ずっと詰めていた息をフッと吐き出すと、思い出したかのように体が酸素を求め、肺を膨張させた。
最後の一文まで読み終えて、脳のビリビリとした感覚が全身に広がるなか、どこか冷静さを保ったままの思考が「良い読書体験だった」とスタンディングオベーションをしている。
本作は、読者をそのようにならしめる「ものすごい」一冊である。「ものすごい」なんて口語は、作品の魅力をお伝えする本連載には足らない、
何が「ものすごい」のか。
まずはストーリー。今よりも進んだ時代の人類は、より良い人間を残すことを自分の価値とし、遺伝子の特性を選んで子供を産む。そんな時代に、四組の夫婦が豪華客船の試験航行に乗客として参加している。しかし、彼らが試験航行だと思っていたそれは、何者かに仕組まれた殺されるまで逃げ続けなければならないゲームの舞台だったのだ。
乗客の一人である主人公のマイラの視点で、この恐ろしい設定が自分のなかにストンと落ちてくる頃には、読者も登場人物同様、もう逃れることはできない。思えば、この辺りからページをめくる指先は震えていた。(抜粋)
集英社オレンジ文庫10周年アンバサダー・大友花恋さんによる作品紹介の続きは、公式HPに掲載。ぜひ、ご覧ください。
https://orangebunko.shueisha.co.jp/book/kankitsu_no_moji
大友花恋
おおとも・かれん●1999年10⽉9⽇⽣まれ、群⾺県出⾝。
雑誌「Seventeen」で専属モデルを務め、現在は「MORE」専属モデルとして活動中。「今⽇、好きになりました。」(ABEMA)ではレギュラー⾒届け⼈を務める。近年はドラマ「正しい恋の始めかた」(EX系/2023年)で主演を務め、ドラマ「フィクサーSeason3」(WOWOW/2023年)、「トークサバイバー2」(Netflix/2023年)、「厨房のありす」(NTV系/2024年)などに出演。