[連載]
第20回カバーアーティスト
石坂莉帆さん
言葉が好きだからこそ、言葉にならないものを表現したい
表紙は、友達を表現した作品です。彼女の〝言葉〟からイメージを膨らませ、木材や鉄などを加工し、スプレーを使ったりして立体的に作りました。
大学で「ペルソナ」という課題があり、誰か一人に着目した作品を作ることになったのです。私が着目したのは中国人の友達でした。高校生のときに日本に来た彼女は、日本語を上手く、正しくしゃべることができないことを気にしていました。でも私は、彼女の言葉にハッとさせられたり、新しいイメージを喚起してもらったりしていたんです。大切な友達に、自分の日本語がおかしいと思わないでほしい、という気持ちを込めて、作品を作ることにしました。
死んだ鼠が「平面的なイラストに見えた」ことや、アメリカに行って「英単語がぐにゃぐにゃに聞こえた」経験。顔にコンプレックスを持ち、自分は「バラバラしている」と感じていること……など、印象に残った彼女の言葉を、できるだけ明るくポップなビジュアルで表現しました。見た人にも楽しんでもらいたいと思ったからです。
昔から言葉に関心があって、ウィトゲンシュタインを愛読してきました。だからこそ、言葉にならない思いや、言葉にできないものを表現したいという気持ちも強くあります。モットーのひとつは、一言でまとめられるような軽率な作品を作らないこと。言葉が担うものと、言葉になり得ないもの、両方を行き来しながら、自分の表現を突き詰めていきたいと思っています。
聞き手・構成=砂田明子/撮影=木内章浩
<藝大生に聞く!Q&A>
Q好きな本
『論理哲学論考』(ウィトゲンシュタイン 著)
Q最近興味のあること
哲学。インスタレーションや作品の制作意図を考えること
Q憧れのアーティスト
同期の同じ課題をこなす友人達
Q東京藝大はどんな大学か
良い意味でも悪い意味でも、何でもあり
Q今後の展望
一言、一目で終わらないものを制作していきたい
石坂莉帆
いしざか・りほ●2002年生まれ。
東京都出身。東京藝術大学美術学部デザイン科4年。Instagram/@haaveg116
X/@r_kkk0716