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清朝時代のシスターフッド
1660年代、清朝時代の中国が舞台。裕福な家の娘である
瑠瑠は漢民族ではなく、ある事情を抱えて撒馬爾罕(サマルカンド=中央アジア・ウズベキスタンの古都)から貿易商の
月華は才色兼備で気品ある少女だが、瑠瑠に対しては尊大な態度。それでも瑠瑠は月華に魅かれ、その命に従うことにする。なぜなら月華は「
唐時代以降、中国の風習であった纏足。幼少期から女性の足を布できつく縛って成長を止めるもので、農作業などで動く必要のないエリート階級の象徴ではあるが、月華はこれを強いられていたのだ。
月華は、集まってくる様々な情報を統合することで物事の全体を把握する自身の力「つまびらきの
ある劇団の頭領が殺された事件。
信頼が深まるなか、月華の芯に国難を憂慮する気持ちと弱い立場の者を守ろうとする包容力があることに気づく瑠瑠。月華の使命と正義感に応えるべく、彼女は大胆な行動に出る。瑠瑠自身にも、善行をすれば「右の肩にいる天使」がそれを見ているという信念があったのだ。
纏足を見て「可哀想」と臆せず言った瑠瑠を信じた月華。まるで万華鏡のように色彩豊かな世界の光と闇、そして少女同士の絆と信頼を描いた、清朝時代のシスターフッドストーリーである。
八木寧子
やぎ・やすこ●文芸批評家、エッセイスト、書店員