[インタビュー]
孫たちから刺激を受けて
元気になりましょう!
0歳から100歳まで英語学習・生涯学習を支援する「紅玉式」代表として、幅広い世代に学びの魅力を発信している池田紅玉さん。ご自身も孫育てをしながら書かれたのが新刊の『孫と遊んで若返る! 老化予防82の秘密』です。
祖父母による育児のサポートは親夫婦に大きな利益をもたらしますが、実は祖父母にとっても数え切れないメリットがあり、良い脳トレになると言います。本書で82個紹介している、秘密の一端を伺いました。
聞き手・構成=増子信一/撮影=藤澤由加
孫育てを一生懸命やっている人は、みなさん元気!
── 現在、三歳のお孫さんがいらっしゃるのですね。
孫ができるまでは、いろいろな人が孫の話をしていてもどこか他人事みたいな感じで聞いていたのです。私自身、母の両親は私が生まれたときにすでに他界していましたし、父の両親は遠方にいたので、二、三回くらいしか会ったことがなく、祖父母との思い出がほとんどなかったのです。
ですから、おばあさんと同居していてよく面倒を見てもらったとか、自分の名前はおじいさんがつけてくれたとかいう話を友だちから聞くと、いいなあと、羨ましく思っていました。
その代わり、歩いて数分のところにいた私の両親は、息子の面倒をけっこう見てくれました。
── 息子さんには、おじいさん、おばあさんの思い出があるということですね。
はい、私の両親は孫である息子を可愛がってくれました。それを見て、孫ってそんなに可愛いのかしら、私には厳しかったのに、と(笑)。
三〇年以上前に、息子の子育て記(『3歳で英単語650』)を書きました。そのときは楽しんで育てていたという感じがありまして、今でもたまにその本を開いて、孫の成長と重ね合わせたりもしています。夫は、当時はかなり忙しかったので帰りも遅く、帰ってきて息子の寝顔を見るだけみたいな感じでした。べたべた可愛がるという感じはなかったのですが、孫のことはそれこそ、べたべたに可愛がっています。夫の孫への溺愛ぶりを見ていると面白いのです。
私たち夫婦と息子家族は徒歩圏内に住んでいますので、息子夫婦が幼稚園に迎えに行けないときは、夫が孫を幼稚園に迎えに行き、我が家に連れて帰ってからは、お風呂に入れたり、一緒にご飯を食べたりすることもよくあります。孫の好きなあのお菓子がもうなくなりそう、と言っては、夫が自分で買いに行ったり、孫はそれほど可愛いことをあらわしている気がします。
── 本でも、「孫育てが老化予防になる理由」として、「夫婦の会話が増える」「自分の健康に気を配るようになる」とあります。
ええ、わが家でも会話が増えました。別に、今後の教育方針をどうしようみたいな、そういう難しい話ではなく、今週末は土曜日、日曜日のどちらに来るんだとか、たわいないことなのですけれど、本当に会話は増えますね。
私自身も、ついついパソコンの前にへばりついて、運動不足になりがちですが、孫をどこかへ連れて行ったり、家の中でも孫の後をついて回っているうちに、自然と運動になっています。
孫育てを一生懸命やっている人は、みなさん元気ですよね。運動会、学芸会、お稽古事の発表会、サッカーの練習試合とか、あちこち行かれますけれど、それにはやはり健康でないとだめですからね。
── 今回の本を書いてみようというのはどんなところから?
私の周りでも、積極的に孫育てに関わっている人はもちろんたくさんいますが、反対に孫ができても、「子守りを押しつけられてはイヤだ」と、はじめから予防線を張っている人もけっこう多いのです。「あら、お孫さんできたの。おめでとう、楽しみね」と言うと、「そうでもない。だって、せっかくのゆったりした老後を孫にかき回されたらイヤじゃない」と言う人もいます。
そういう人たちに対して、「孫育ては実は楽しいのよ。余生だって今よりも充実するし、孫と接することによって、自分が子育てしていたときのことをいろいろ思い出すのも楽しいし。だまされたと思って皆さんやりましょう!」というメッセージなのです。
孫育てで気をつけることは、
言葉遣い、食事、そばにいてやること
── 池田さんご自身、孫育てに関して気をつけていることはありますか。
一番は言葉遣いですね。孫に対してなるべく丁寧な言葉を使うようにしています。小さい子は、大人たちの言うことややることをよく聞いて、見ているのです。だから自分のちょっとした口癖もうつる。数日前も、息子に指摘されました。孫が息子たちに「そんなこといけませんよ」と言うそうです。私の口癖かもしれません。
あとは食事ですね。私が息子を育てているときに父に言われてよく覚えているのが、「ちゃんとした食事を食べさせていれば、子どもは曲がらない」という言葉です。だから食事だけは手を抜くな、と。栄養バランスを考えるのはもちろんですが、食事をする時間を楽しむことも大切にしています。孫と一緒にお料理をしたりお買い物をしたりも楽しんでいます。本の中にも、食事の場面やおいしそうなお料理の絵が出てきます。
もう一つ気をつけているのは、孫がいるときには、とにかくそばに一緒にいてやること。何をするわけでなくても、気配を感じるぐらいの距離にいて、遊んでいるのをただ見ている。そうやって、誰かがそばにいるというのが、子どもの心の安定には必要だと思います。
── かつて昼間一人でいる子どものことを「鍵っ子」と呼んでいたこともありました。
アメリカでは、子どもを一人きりにすると親が罰せられることもあります。ともかく、子どもを一人にしてはいけないというのは、時代が違っても変わらないことです。そういう変わらないことも、この本では外さないように書きました。
── 「序章」にも書かれていますが、昔に比べて子どもの数が少なくなり、その子どもも晩婚化、未婚化が進んで、孫に恵まれるのは「奇跡」に近いと。そうした中で、実際の孫に恵まれなくても、なんらかの形を通じて孫世代と遊ぶ=交流することで多くの人が老化防止になることもあるような気がします。
最近、幼老複合施設というのが少しずつ増えています。同じ施設の中に、高齢者と子どもたちが一緒に食事をしたり遊ぶ場があるというのは双方にとって、とても良いことですね。高齢者は元気な子どもたちに接することで刺激を受けて元気になる。子どもたちは子どもたちで、高齢者から折り紙とか
この本でも「絵本の読み聞かせ」について書いていますが、高齢者の方が小さい子に読み聞かせをしたり、反対に、小学生の子が高齢者に、今の国語の教科書はこんなのだと読み聞かせをするとか、工夫次第でいくらでも活動が広がります。
子どもたちからすると、お父さん、お母さんはいつも忙しくて、ばたばたしているので、祖父母世代の人たちと一緒にいて、なんとなく時間がゆっくり流れている雰囲気に浸るだけでも良いと思うのです。そういう優しい時間があると、気持ちに余裕ができるので、高齢者にとっても子どもたちにとってもプラスになりそうですね。
老人施設には九〇歳を超える方もたくさんいらっしゃいますから、孫はいたけれど、ひ孫には恵まれなかったという人は、ひ孫世代の子どもたちを見ながら、孫育てとか、子育てのことを思い出して気持ちが温かくなるのではないでしょうか。
孫育てにまつわる82項目を、マンガやイラストも使いながらわかりやすく解説。
マンガ・イラスト=太田由紀
── この本は、祖父母世代に向けて、孫育てに関わることをおすすめすると同時に、子育て中の親世代へも、自分たちの親に手助けをしてもらっても良いと書かれている気がしますが。
はい。子育てに関しては、時代が異なるので、親の世話にはならない、なりたくないという若い方もけっこういます。でも、私は、むしろ世話になれば良いと思っています。と言うのも、子育ての一番の協力者、理解者は、やはり自分たちの両親ですから。それを時代が違うからとか、変な考えがうつってはいけない、というようなことを言って避けてしまうのはもったいないと思います。
この本は、これから子育てを始めようという若い方たちにも読んでいただき、おじいさん、おばあさんとは、こんな良いものなのね、とわかってもらいたいのです。そして、親と祖父母がこの本を使って、一緒にやってみるか─、そういう形になれば嬉しいです。
── 孫育てについついのめり込んでしまう人もいますけど、そういう人たちのために「気をつけて! 孫育てNG集」も入っています。
お互い人間ですから、つい余計なことまで言いたくなることがあります。とくに実の親子の場合はそうですね。義理の関係でしたら少しは遠慮というものもあるのでしょうが。でも、そうやってお互い本音をぶつけ合いながらコミュニケーションをとっていくのが大事なのです。
SNSやAIの時代になって、若い世代はそこから情報を得てすごく便利になっていますが、逆に、人間対人間の付き合い方がわからないまま大きくなってしまう。そうしたコミュニケーション能力の欠如は、やはり問題だと思います。
祖父母は、適度な距離を保ちつつ、ゆったりと見守る、その具体的な方法もこの本で紹介しています。
── SNSやAIのことに触れられましたが、急激にデジタル化が進んで、もうついていけない、もうこれは無理だと思っている高齢者も多いのではないかと思うのですが。
いくら時代が違っても変わらないことがあります。子どもの育ち方もそうですよね。ですから、特別なことをやらなくても、自然体で、普通の日常生活を見せれば良いと思います。最近では少なくなりましたけど、昔は同じ町内のお祭りで、老人から小学生、中学生もみんなで一緒に
つまり、一緒に遊ぶ、楽しむ。その遊び方や楽しみ方もいろいろあります。この本では、全部で82の項目を挙げましたけれど、もちろんそれをすべてやる必要はなく、何かこれならできそうだと思うものからやってみていただければと思います。
本文には、目にやさしい大きな活字を使い、マンガやイラストもふんだんに入っています。どうぞ気軽にお手に取ってください。おまけとして、自作の「孫育てカルタ」をいくつか載せましたので、そちらも楽しんでいただけるとうれしいです。
読み札を考えるのは脳トレにも効果的! 池田さんが趣味で作ったという「孫育てカルタ」を参考に、ぜひお孫さんと一緒に、オリジナルのカルタを作ってみてはいかがでしょう。
池田紅玉
いけだ・こうぎょく●0歳から100歳まで英語学習・生涯学習を支援する、「紅玉式」代表。
カリフォルニア州立大学大学院修了。大学の教壇を離れた後、現在は著述業、講演活動、『こうぎょくカップ』を主宰。専門は英語音声学、英語朗読法、幼児教育、バイリンガル子育て。「紅玉式 英語そろばん」開発者。著書に『満点ゲットシリーズちびまる子ちゃんの小学生英語』『すばらしい英語朗読・音読の世界』等。