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「日本三大疏水の父」の見果てぬ夢
治水は産業の要となる。特に新しく農地を開発し作物、特に米を作るために用水を確保することは絶対条件となる。
明治新政府の先頭に立っていた内務卿の大久保
辿り着いたのは福島の
だがそれに立ちはだかるのは
だが他に場所はない。莫大な費用が掛かっても、大久保は国営事業として開拓を行うことを決めた。
古今東西、未来永劫、水争いは絶えない。水を引くなら我が土地へ、と誰もが望む。用水路をどこに作るかは死活問題だ。一揆も辞さない農民たちに心を決めさせたのが、御雇外国人で土木の専門家、オランダ人のファン・ドールンだった。
南が苦労の末に用意した四つの用水の候補地から選んだのは峠下の隧道が短い経路だった。山の頂上近くに隧道を通し、
外国人の力を借りると同時に、日本人留学生も活躍した。ヨーロッパで学び、新しい機材と技術を輸入し、人力では不可能と思われたことを成し遂げていく。明治の技術者たちは
明治維新から間もないこの時期、幕末から維新にかけて起こった戊辰戦争の遺恨は凄まじい。
武士に利用された農民たちの怒りも収まってはいない。そんな状況の中、未来を見据えていた大久保利通の夢に賭けた男たちの姿は心躍る物語となった。
東えりか
あづま・えりか●書評家