[特集]
集英社新書創刊20周年記念
集英社の〈知の水先案内人〉として、文化、芸術、政治、経済と幅広いジャンルを網羅する集英社新書が、2019年11月、創刊20周年を迎えました。そこで今号では、集英社新書でおなじみの著者の方々にご登場いただき、集英社新書や自身の著作への思いを語っていただきながら、その歴史を振り返ります。
今度の『いま、なぜ魯迅か』で、共著を含めて九冊になる集英社新書で最初に書いたのが『電力と国家』だった。二〇一一年一〇月一九日の刊行だから、同年三月一一日の東日本大震災による東京電力福島原発の大事故の後に急いで書いたことになる。
第一章が「国家管理という悪夢」で、かつて戦争を遂行するために軍部といわゆる革新官僚が手を結んで、電力の国家管理(電力国管)を強行したが、これはナチスドイツの「動力経済法」を模倣したものだった。
それに抵抗した〝電力の鬼〟松永安左ェ門を中心として戦後の電力事業はスタートした。拙著の第三章は「九電力体制、その驕りと失敗」である。戦争中の国家への警戒心が薄れて、九電力はそれぞれの内部で腐敗してくる。原子力発電という魔物を抱えて汚濁は桁違いに大きくなった。『電力と国家』はいわば総論だったが、今度は東京電力や関西電力についての各論を書かなければならないのだろう。
佐高 信
(さたか・まこと)●評論家