[本を読む]
自分のいる組織に疑問を感じて
いる人にはぜひ読んでほしい
企業、政党、芸能、スポーツなど、あらゆる分野の日本型組織で不祥事が続いている。まるで日本に存在する大小さまざまな集団が制度疲労を起こし、悲鳴を上げているようだ。なぜここに来て組織の崩壊が加速しているのか、本書はその原因を容赦なく解明してゆく。
日本の組織は、家族・ムラのような血縁・情でつながった集団の性格と、目的達成のために人為的に作られた集団の性格を併せ持っており、この特殊性こそが不祥事の温床になっていると著者は指摘する。実際に日本の組織では合理より情が優先されて制度が
組織の不祥事を分析する場合、責任者(経営者)や当該組織の特質に答えを求めがちだが、本書はそこに留まらず、組織を構成する人々の意識の変化にも厳しい目を向ける。特にメンバーが共同体を健全に保つために自ら主体的に貢献しようと発言・行動する「自治」意識が薄れ、もの言わぬ集団に変質したとの主張は耳が痛い。働く人々のエンゲージメント低下の弊害は拙著『日本の電機産業はなぜ凋落したのか』でも取り上げたが、主体性の喪失が集団無責任体制を生み、組織の崩壊を加速させているのは間違いない。
本書の後半では今後の組織の在り方、人々の働き方に対する提言が行われる。それらに通底するのは個人の自由を尊重しつつ、個人の自律を重んじる著者の姿勢だ。読者は経年劣化した日本の組織の再生には個人がより強くなる必要がある、と理解するはずだ。
二〇二五年を迎えても組織の崩壊は続いており、新年早々フジテレビのスキャンダルが世間を騒がせた。同局のアナウンサーが涙ながらに真相究明を訴える姿を目にしたが、本書を読み終えたあとでは彼への見方は少し変わる。同社の社員にはぜひ本書を読んでほしいと思う。
そして、「果たして自分自身は自治を
桂 幹
かつら・みき●作家