[本を読む]
国会も東大も現状に甘んじてはならない
秋山訓子氏は拙著『なぜ東大は男だらけなのか』を本誌(2024年3月号)で取り上げてくださった際、「東大と国会(議員)は似ている」と指摘した。
本書を読んでまったくその通りと納得した。全国に1788ある地方議会で、女性が半数以上を占めるところは2023年の時点で9つ、女性首長は知事で4・3%、市区町村長で2・3%に過ぎない。結局、日本の政治は「あまりに似通った属性の人ばかりに占められ」「しがらみでがんじがらめになり、変化に臆病になり〔……〕内向きの論理に支配」されている。それは日本人男性教授が大学運営を掌握し、学生も都市の私学出身男性が圧倒的に多い東大の現状と確かに似ている。
そうなると大学も政治も状況はかなり絶望的と言わざるを得ない。実際、ジェンダーギャップ指数で日本は146カ国中118位(2024年)に沈んでいる。
しかし、とかく悲観的で投げやりな気持ちになりがちな私と異なり、秋山氏はこの暗い状況の中にも微かではあるが、希望の光を見出す。実際に日本各地に足を運び、政治を通して未来への展望を切り拓こうとする様々な女性(と男性)に会い、丁寧に話を聞く。
例えば地方都市で活躍する女性議員を取材すると、生活と密着した事項を取り上げる地方議会は女性にとって「最高の職場」であることがわかる。またシングルマザーや生理のことなどを取り上げる女性政治家の活動が、男性には当たり前とされてきた法律や制度を変える力を持つこともある。女性の政治家が増えると、今まで光が当たらなかったところに焦点が合わせられ、すべての人が生きやすくなる社会につながるのである。
だからこそ、女性の政治家を倍増させなければならない! そのためにはもっとロールモデルが必要だし、フランスや台湾のようにクオータ制を設けても良いだろうと秋山氏は主張する。
大学でも政治の世界でも、決して現状に甘んじてはならない。女性を含めた多様な属性の人びとが活躍する社会を目指す努力の価値を、改めて認識させてくれる書である。
矢口祐人
やぐち・ゆうじん●東京大学大学院教授