[受賞記念エッセイ]
フルベットな小説家人生
平石さなぎ
私の尊敬している警察官が言っていた。
「人生はすべて
目に浮かぶ光景がいくつかある。空を舞う
日常生活のなかでも、 「これはもう、実質ギャンブルだ」と感じることがある。受験、就職、恋愛、友人、家族関係。どれも努力すればなんとかなる部分がある反面、やっぱり努力ではどうにもならない部分も存在している。そこにどれほどの時間と愛を注いでも、失うときは失ってしまう。運とかタイミングって意地悪だ。
だから、 「はっきりした未来は予想できない」 。
それでも、 「たくさんの選択肢からひとつを選ぶ」 。
このふたつを繰り返すことが人生なら、やっぱり警察官の言うとおり、人生はすべて博打なのかも。
小説もそうだ。誰かの人生をえがいた物語だから、どこかに〈
けれど不思議なことに、主人公が賭けに成功したからといって、物語がハッピーエンドを迎えるとはかぎらない。逆もしかりで、失敗したからといってバッドエンドになるともかぎらない。その敗北からうまれた景色が、思いがけないハッピーエンドを連れてきてくれることもある。
人生も小説も博打も、私は得意かどうかわからない。人生に関しては一周目だし、小説に関しては新人賞に落ちまくってきたし、博打に関してはシンプルに負けてきた。好きだから続けている。
「人生はすべて博打だぞ!」
私の尊敬する警察官、あらため

撮影=神ノ川智早
平石さなぎ
ひらいし・さなぎ●1997年京都府生まれ
『ギアをあげた日』
単行本・2026年2月26日発売予定




