[本を読む]
団地団は君を待っている
『世界は団地でできている』は、団地団のメンバー六人が、団地が登場する映画を縦横に語った本だ。メンバー紹介は控えるが、一人一人が抜群のセンスと、クリエイティビティの持ち主。加えて、設定が練られた戦隊もののように、見事にキャラかぶりがない。驚くべきバランスのよさだ。
本書は、彼らが過去一五年で行なったトークイベントをもとに構成されており、地の文にところどころ、トークパートが挿入される。第六章は丸々、トークの再現にあてられていて、その場のノリで脱線、エスカレートするさまが、臨場感たっぷりに伝わってくる。
団地にも映画にも興味がない。そういう方でも心配ご無用。彼らの話題の裾野は実に広い。それこそ、世界を語り尽くす勢いだ。
六人の異能集団が、世界を語り尽くすため、夜な夜な開いている会合の、団地と映画を
実は、ほぼ幽霊ながら、ぼくも団地団の一員だ。本書でもとりあげられている映画『みなさん、さようなら』の原作者ということで、トークイベントにゲストとして呼んでもらい、それがあまりに楽しかったので、入れてください、とこちらからお願いした。
彼らのトークはいわば、超高速の大縄跳び。ゲスト扱いされなくなってからは、もういけない。その後も何度かイベントに参加したけれど、さあ入ろう、いま入ろうと足踏みばかりで、爪痕らしい爪痕は残せていない。
が、目にもとまらぬ速さで回り続ける縄=会話の、なんと魅惑的なことか!
読書なら、七番目のメンバーとして、自分のペースで彼らのトークに参加できる。本書を読み、その楽しさを味わったなら、あなたも立派な団地団の一員だ。
今回の刊行で、爆発的に団員が増えるに違いない。
久保寺健彦
くぼでら・たけひこ●小説家