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和田秀樹『疎外感の精神病理』(集英社新書)
をパトリック・ハーラン(パックン)さんが読む
熱意を込めた日本への問題提起

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熱意を込めた日本への問題提起

 自慢じゃないが、僕は友達が沢山いる。いや、自慢だね。しかし、自慢になるほど、友達の多さを高く評価する社会は日本で蔓延する疎外感の源でもある。和田秀樹先生の新書でこの事実を知ったとき、かなりショックだった。
 日本はこの半世紀、競争社会から同調社会へとシフトしている。70年代から学校は成績順位の張り出しを廃止し、80年代、90年代で運動会でも順位をつけない、学芸会でも主役を立てないなどと、差をつけない文化が広がってきている。しかし、友達を作るという競争だけが許され続けた。むしろいじめ防止対策としてその競争が促進された。ということは、友達がいない人は「ダメ人間」とされる上、ほかの分野でトップを取ってその穴を埋めるすべを失ってしまう。社会的承認を得られなくて、益々疎外感が増す。
 この流れも含めて、和田先生の明解な説明を読むと、疎外感の原因や要素がくっきり見えてくる。僕にとって、友達競争の話が一番目からうろこだったが、トラウマや高齢、引きこもりや依存症などなど、多方面から疎外感の要因や形態が紹介され、読者によってしっくりくるところ、目覚めるところはきっと人それぞれあるでしょう。
 和田先生自身も疎外感は他人事ではないようだ。過去の研究や留学だけではなく、子供のころ6回も転校して「どの学校でも仲間はずれを経験しました」(p132)などと、実体験も著しながら熱意を込めて問題提起しているのだ。
 新たな気づきとなるのは構造的な話だけではない。作り笑いの見抜き方(目と口が同時に動く! p35)、コロナ禍で思ったほど自殺が増えなかった理由(リモートが普及し、精神的に楽になった人もいるからだろう! p40)、「四当五落」の間違い(東大入試合格者は平均で8・5時間も寝ている! p53)、日本のギャンブル依存症の多さ(先進国平均の4~5倍! p121)などなど、驚くようなデータや豆知識も驚くほど入っている一冊だ。
 現代社会の重要な課題の解説も見事だが、読み物としても見事に面白い一冊として(もう沢山いると言わないから)友達にすぐおすすめしたい。

パトリック・ハーラン(パックン)

タレント

『疎外感の精神病理』

和田秀樹 著

発売中・集英社新書

定価 1,100円(税込)

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