[本を読む]
多角的なまなざしで
政治介入の不当性を訴える
本書は、日本学術会議の新会員任命拒否事件について、異なるディシプリン(専門)やメソッド(手法)を持つ書き手たちが言葉を紡いだ論考集だ。菅
それに対し、学術会議の役割や、学問の自由の重要さについて、原則の整理、歴史の確認、意義への説得を重ねるのが本書だ。同じ事件について二十六人の書き手たちの解説を読むというのは、贅沢な体験でもある。この学問はこのようなアプローチで語るのか。この立場からはこの視点で語られるのかと、多角的なまなざしと知識を得ることができる。 科学史家の隠岐さや香氏がアカデミーの国際通念について整理をし、政治学者の杉田敦氏が公権力と学術共同体の緊張関係についてまとめる。憲法学者の石川健治氏が、記者の望月
書かれていない視点、同意できない言説があれば、そこから自分の立場も読めてくる。百人組手で知性を鍛え、不当性に抗う訓練になる一冊。
荻上チキ
おぎうえ・ちき●批評家、ラジオパーソナリティー