青春と読書 本の数だけ人生がある ─集英社の読書情報誌青春と読書 本の数だけ人生がある ─集英社の読書情報誌

定期購読のお申し込みは こちら
年間12冊910円(税・送料込み)Webで簡単申し込み

ご希望の方に見本誌を1冊お届けします

連載/本文を読む

『セカンドキャリア ――引退競走馬をめぐる旅』
片野ゆか
第2回 前髪パッツンの男の子

[連載]

第2回 前髪パッツンの男の子

 私がラッキーハンターの一口馬主になってまもなく、SNS上で見知らぬアカウントから、思いもかけないメッセージが送られてきた。

 初めまして。ラッキーを競走馬時代に担当していたはやしと申します。この度は、ラッキーに出資してくださり誠にありがとうございます。昔から大人しくて愛嬌があって、何よりも人が大好きな子なので、また是非ぜひ会いに行ってあげて下さい。

 画面をスクロールすると、写真が添付されていた。
 馬房からこちらを見つめる馬は、ややホワホワしたたてがみを額の半分あたりでパツンと切り揃えられていて、入学式を終えたばかりの男の子みたいだった。顔の輪郭や真っ黒な瞳からは、まだ幼さが感じられたが、眉間みけんにあるミルクをひと垂らししたような美しい模様には見覚えがあった。
 これは……若馬時代のラッキーハンター!?
 メッセージの送り主は、滋賀県の栗東りつとうトレーニングセンターに勤務する林達郎たつろうさんという人だった。通称“トレセン”と呼ばれるこの場所はJRA(日本中央競馬会)が運営する競走馬専用の調教施設で、栗東トレーニングセンターと茨城県にある美浦みほトレーニングセンターは、中央競馬の東西二大拠点といわれている。
 私がラッキーハンターのことをSNSにアップしてから、わずか一時間程でメッセージが届いたことに少々驚いたが、林さんは「リアルタイム検索のお気に入りワードから訪問させていただきました」という。検索ワード設定しているとは、ラッキーハンターをかなり激しく愛しているようだ。
 ちょっと意外なのは、馬のことを「子」と呼んでいることだった。ペット動物の世界では「うちの子」などの表現がかなり浸透していて、状況によっては新聞や雑誌などマスコミでも使用されるが、こういうセンスは現役バリバリの競馬関係者には鼻で笑われそうな気がしていただけに、いきなり親近感がわいた。


前髪パッツンの男の子(新馬として入廐した日のラッキーハンター)
提供:林達郎

 こちらからもメッセージを送ると「今まで何百もの馬たちと大なり小なり触れ合ってきましたが、ラッキーの魅力は今でも唯一無二です」と返信もやたらと熱かった。添付された写真は、林さんがラッキーハンターと初めて出会った日に撮影したもので、二歳二か月くらいだという。馬の年齢を人の年齢に当てはめる方法は複数あるようだが、人間に換算すると十二歳くらいらしく、どうやら入学式も的外れではなかったようだ。前髪パッツンのラッキーハンターは、あどけないという表現がピッタリで、私はしばし写真に見惚みとれながらホンワカした気分を味わった。
 同時に思ったのは、ラッキーハンターは本当に競馬場で走っていたのだなぁ、ということだった。
 引退競走馬支援プロジェクトの拠点で出会ったのだから、ファーストキャリアが競走馬だったことは言うまでもない。動くたびにつややかに浮かびあがる圧倒的な筋肉を至近距離で目にしたときは、サラブレッドが走るために生まれてきた動物なのだと再認識させられた。
 だがラッキーハンター自身は、講習会でデモンストレーションモデルを飄々ひようひようとこなしたり、講師や参加者と穏やかに交流したり、大型扇風機に鬣を吹き飛ばされながらニコニコしていたりと常に穏やかモードだ。それだけにレースで疾走する姿が、どうしても想像できないままでいた。
 なにしろ競馬は、勝敗が全てのハードな世界だ。
 観客の歓声と拍手、華やかなファンファーレが鳴り響くなか、出走馬たちは派手なウエアに身を包んだ騎手を乗せ、威圧感の塊みたいな無機質なゲートへ進んでいく。一瞬の静寂を経てゲートが開くと、弾丸のごとく飛び出した馬たちがコースを奪い合いながら疾走し、まもなく最終コーナーへと滑り込む。さらに大きくなる歓声に怒声が加わるなか、ゴール板の前を馬たちが次々に走り抜けていく――ほんの数回テレビで見たことしかないが、もし自分が競走馬だったらと想像するだけで胃が痛くなりそうだ。
 ラッキーハンターが輝ける場所は、勝負の世界でなかったことは容易に想像できる。ホースセラピーというセカンドキャリアが、あまりにマッチしているだけに現役時代は遠くなるばかりだ。
 だが実際は、中央競馬で活躍すべくラッキーハンターを調教した人が実在する。デビュー前からの担当ということは、この世界では育ての親同然といってもいいだろう。唯一無二の馬と断言する林さんのもとで、このかわいらしい男の子はどのように成長して、どんな競走馬時代をおくったのだろうか。


人が大好きで好奇心旺盛なラッキーハンター 提供:林達郎

 栗東を訪れたのはコロナ禍がはじまって以降、数か月ぶりだった。林さんとの待ち合わせ場所は、もちろんラッキーハンターが暮らすTCCセラピーパークだ。
 軽快な歩調でロビーにあらわれたのは、大柄ではないけれど背筋のスッキリした印象の男性だった。肩書きは、音無秀孝おとなしひでたか調教師の廐舎きゆうしや所属の調教助手。主な仕事は、調教師の指示のもとで、競走馬の日々のトレーニングからアフターケア、心身の健康管理までトータルでおこなうことだという。体幹のブレない身のこなしは、どうやら馬業界で働く人特有のものらしい。
 林さんをはじめトレセンで働く人々の多くはJRA所属だが、採用は調教師が運営する廐舎単位におこなわれているという。各廐舎は完全独立採算制で、つまりトレセンという国のなかで複数のライバル企業が切磋琢磨せつさたくましているようなものらしい。
 日々の勤務時間についてくと、担当馬がレースに出ない日は午前二時から九時過ぎまで、午後は三時前から夕方までだという。馬の朝は早いと聞くが、この世界の一日は、ほぼ日付変更とともに始まっているのだ。
 この日、林さんは午前中の仕事を終えたところだった。
「ラッキーに会うのは久しぶりなので、楽しみにしていました」
 林さんは、見るからに新鮮そうな袋入りのニンジンを手にしていた。鼻先にぶら下げるという表現など、馬とニンジンの組み合わせはステレオタイプなものだと思っていたが、あながちそうではないらしい。
「馬って、本当にニンジンが好きなんですね」
「ニンジンが嫌いな子はいません」
 林さんは、一番人気のおやつだという。
 早速、ラッキーハンターに食べさせてあげたいところだけれど、午前中はハンディキャップを持つ子どもたちのための支援プログラムで、セラピーホースとして働いているという。セカンドキャリアでも大活躍しているのだ。
 競走馬とセラピーホース、ふたつの時代を知る林さんの目に、ラッキーハンターはどのように映っていたのだろう。ニンジンタイムは後のお楽しみにとっておいて、ファーストキャリアについて訊いてみることにした。

 林さんがラッキーハンターと出会ったのは二〇一三年の夏、就職して三年目のことだ。函館はこだて競馬場で開催されるレースに備えて、前乗りして出走馬を調教する役目を初めて任された。
「担当する馬は通常二頭ですが、一頭を栗東から連れて行き、もう一頭が新馬として入廐にゆうきゆうしたばかりのラッキーハンターでした。最初からノホホンとしていて、ちょっと有り得ないくらい大らかで、とにかくカワイイ馬でした」
 現在とほぼ変わらない印象だけれど、ラッキーハンターは競走馬としてかなり珍しいタイプだったようだ。なぜなら競馬界で、新馬はもっとも危険な存在だからだ。
 生産牧場で生まれたサラブレッドの子馬が、競走馬への道を歩むために母親から引き離されるのは生後半年くらいのことだという。同じくらいの月齢の子馬が集まる育成牧場は、競走馬候補たちの英才教育学校のようなもので、そこで体力をつけながら基礎トレーニングを重ね、二歳を過ぎる頃にデビュー目指してトレセンの廐舎に入る――というのが競走馬たちの歩む基本的なスケジュールだ。
 林さんによると、これまで育成牧場で暮らしていた新馬にとって、トレセンはとても怖いところだという。
「勝負の世界に直結しているし、きついトレーニングを重ねるため人も馬もピリピリしています。新馬にとっては、ただでさえ初めての場所なので不安感も恐怖心も大きくなっているはずです」
 馬は、怖ければ暴れる。そして新馬は、たいてい大暴れするという。体重四百キロを超えている大動物が相手なので、少しでも対応を間違えたら大怪我は免れない。そして馬たちはまぎれもなくオーナーからの預かりもので、生命と財産の両方を守るためにも、廐舎の仕事は細心の注意が必要なのだ。
 馬たちにとって最初の難関は、くらを付けて人を乗せることだという。
 我々が目にする馬というのは当然のように鞍を付けて走っているので、つい「馬とはそういうもの」と考えてしまいそうになるが、そもそも動物にとって背中に何かを付けたり、まして人を乗せるなんて恐怖でしかない。それでも最終的には受け入れてくれるのだから、あらためて馬というのはなんと稀有けうな動物なのだろうと思う。
 鞍を付けたり、人が乗るトレーニングは、育成牧場時代からやってはいる。だが仲間と離れて新しい環境にやってきたばかりの馬は、緊張感や警戒心が頂点に達しているといっても大袈裟ではない。
「通常は、ひとりで新馬をトレーニングするのは難しいといわれています。就職してまだ三年目で、単独で函館に来ていたのでまわりに頼る人もいませんでした」
 さて、どうしたものか……。林さんはやや戸惑ったが、それでもラッキーハンターにはどこか安心感を抱かせるものがあったという。初めてのトレーニングで馬房から出すときは念の為、隣の廐舎のスタッフに声をかけた。
「この馬はじめてなので、少しだけ前を歩いてもらってもいいですか」
「ひとりでやるの。大丈夫?」
 心配されたが、手綱たづなを手に並んで歩きはじめたら、みるみる不安は薄れていった。
「大人しいので、たぶん大丈夫です」
 それは思い違いではなかった。
 ラッキーハンターは、馬場に出しても終始ホワワ~ンとしていた。鞍に慣らすために、ポンと勢いをつけて腹這いで背中に乗っても平然としていた。穏やかで、なんてかわいいのだろう……! 出会って早々、林さんはすっかり心奪われてしまった。
 ラッキーハンターは、とにかく“いつも楽しげな馬”だった。馬房の前を通るたびに、嬉しそうに通路に顔を出しながら「僕ここにいるよ」「遊ぼうよ」「その人は誰~?」「ねえ、ねえ、何してるの?」といった言葉が聞こえてきそうだったという。社交的とか人懐こいという言葉だけでは表現しきれない愛嬌があり、そう感じたのは林さんだけではなかった。
 函館競馬場では、レースの日程に合わせて全国から集まった廐舎スタッフと馬が同じ施設を使用して、調整やトレーニングをおこなっている。通路を行き来する他の廐舎スタッフにも頻繁にアピールを続けるラッキーハンターに、注目が集まるようになるまで時間はかからなかった。
「おまえのとこの新馬、めっちゃカワイイな!」
 馬を見慣れた競馬関係者でさえ驚くほどの、愛されオーラだった。特に並びの馬房を使用するほかの廐舎のスタッフは「かわいい」「癒される」とメロメロになった。
 競走馬デビューを目指すためのトレーニングは、牧場時代にくらべると格段に厳しい。まだ体力がなかったラッキーハンターは、一日が終わるとクタクタで、馬房に戻ると完全に横倒しになって熟睡していたという。新馬は緊張のあまり、疲れていても休息や睡眠がしっかり取れないことがある。しかしラッキーハンターは最初からオン・オフの切り替えがしっかりできて、担当としても安心できた。
 とはいえ一般の馬は、人の気配があれば気づいてすぐに身を起こす。だが清潔な敷きわらをたっぷりと敷き詰めたフカフカのベッドで、寝息を立てるラッキーハンターからは、完全にリラックスした空気しか感じられなかった。
 その様子を見て、林さんはある挑戦を思いついた。
「僕、ラッキーの隣で寝られるような気がするんです」
「そんなことして、大丈夫か?」
 親しくなった先輩は心配したが、ゆっくりと馬房に入るとラッキーハンターは少し頭を上げただけだった。投げ出された四肢に力が入る気配はなく、どこをでてもされるがままだ。林さんがその横に静かに腰をおろして少しずつ馬体に体重を預けてみると、ラッキーハンターもそれを自然に受け入れた。
「すげーな!」
 先輩は写真を撮りながら心底驚いていたが、こんなことは林さんにとっても初めてのことだった。
 私は、なぜラッキーハンターにきつけられたのか――?
 林さんから現役時代のエピソードを聞きながら、私はひとつの疑問がスルスルと解けていくのを感じていた。ラッキーハンターの行動や人に対する反応は、はっきりいってかなり犬っぽいのだ。
 あらゆる動物のなかで、犬ほど積極的に人間とコミュニケーションを取ろうとする生き物はおそらくいないだろう。生まれながらにして、人が指さすものに注目する能力を持つのは、人間と犬だけといわれている。また最近の研究結果では、犬は犬同士でいるときよりも、人間と接しているときのほうが心理的な満足度が高いこともわかってきている。
 人間への好奇心が旺盛で「遊ぼうよ」「それ、なーに?」と常に楽しそうにアピールし続けることは、もっとも犬らしい犬の基本行動だが、これは新馬時代のラッキーハンターのエピソードとピッタリ重なっている。
 犬っぽい猫や、猫っぽい犬がいるように、おそらくラッキーハンターは犬っぽい気質が強い馬で、そんなところが馬の知識ゼロの私にも親しみやすかったのかもしれない。
 林さんによるラッキーハンターの逸話は、聞けば聞くほど犬を連想させるものだった。しかも並の犬ではなく、突出して大らかなタイプだ。


トレーニング後、馬房でウトウトするラッキーハンター 提供:林達郎

 初めて見るものに動じないラッキーハンターは、ゲート試験もスムーズに合格できた。これは競走馬デビューのためには必須の試験だが、警戒心が強すぎるなどの理由で何度トライしてもゲートインできない馬もいるというから、担当者の喜びと安堵感はひときわ大きい。
 肝がわっているというか、何やら大物感さえ漂っているような気がするが、「どちらかというと、天然のマイペースタイプです」と分析する林さんは、ラッキーハンターは人を笑わせる才能にもけていると言う。
 レースの出場が決まった競走馬は、前の週から“追い切り”と呼ばれる本番さながらのタイムを目指したトレーニングをする。普段よりも格段にハードな調教なので、汗や土をきれいに洗い流してあげた後は、特に負担がかかる膝からひづめの上にかけてアイシング用の白い粘土を塗ってあげる。これは筋肉の疲労回復に効果があるもので、競馬界では定番のアフターケアだ。
 林さんがラッキーハンターの異変に気づいたのは、ほかの用事をすませて再び様子を見に行ったときだった。廐舎の通路の先に、馬房から顔を半分覗かせてこちらに視線を送ってくる栗毛の若馬が見えた。しかし、その姿はいつもとまったく違っていた。
 ラッキーの馬房に、ピエロがいる……!
 粘土を塗った前足で顔をいたのだろうか、まるでピエロのメイクを施したように、ラッキーハンターの左目のまわりが白くペイントされていた。笑いをこらえきれないまま林さんがアイフォンを構えると、ラッキーハンターは嬉しそうにカメラ目線になったという。
「偶然とは思えないキレイな仕上がりで、大笑いしました。ラッキーには生まれながらにして、人を笑わせる才能があるんです」
 人間の世界には、意図せず面白いことができる人がいるが、どうやらそれは馬の世界にもあり得ることらしい。さらに林さんが教えてくれたのは、砂浴びタイムのエピソードだった。
「ラッキーは砂のうえでゴロゴロするのが大好きで、馬にとってはストレス発散効果があります。トレーニングを頑張っていたので、少しでも気分転換ができればと砂場に連れていってあげたら、そこで驚いて飛び上がってしまったことがあるんです」
「いつも大らかで何にも動じないラッキーがそこまで驚くなんて、何があったんですか?」
 私が信じられない思いで訊くと、答えは予想もしないものだった。
「自分のオシッコをいだんです」
「え? 自分のオシッコの臭いに驚くって、どういうことですか」
「馬はフレーメンといって、尿の臭いを確認して歯を剝くような表情を見せることがありますが……ラッキーのあれはおそらく違うと思います。動画があります」
 林さんのアイフォンに、砂場で仰向けになって四肢を振り回すようにして砂浴びを楽しむラッキーハンターの姿が映し出された。
 砂浴び最高~♪ 最高だ~♪ 今日も一日頑張った~♪
 ラッキーハンターの様子から、即興の鼻歌が聞こえてきそうだった。馬は骨格上、自分の体の多くの部分を自分で触ることができない。特に背中や腰は、虫に刺されたり汗をかいても気軽に搔くこともできない。馬にとってのゴロンゴロンは、おそらく犬や猫よりも遥かに至福のときなのだろう。
 動画のラッキーハンターは、やがてスックと立ち上がると放尿をはじめた。体重四百キロ以上の大動物の尿はまるで滝のような迫力だが、足元のサラサラの砂がすみやかに吸収していった。事が終了するとラッキーハンターは、確認するように濡れた砂に静かに鼻を近づけた。その瞬間、馬体が弾かれたように上下した。パニックでも起こしたのかと思ったが、二、三回ジャンプして走りまわると冷静になった。そして自分の尿を大量に吸い込んだポイントに戻り、先程と同じように鼻先をピタリと砂につけると、再びロデオのようにさらに激しくジャンプした。
 すぐに冷静になったので事故の心配はなかったものの、林さんが「一瞬、焦りました」と言うのも無理はない。
「ラッキーは、どうしちゃったんですか?!」
 私が訊くと、林さんは「あくまで推測ですが」と前置きしたうえで、ラッキーハンターの気持ちを代弁してくれた。それによるとシーン1は「くっさー!」で、シーン2は「やっぱり、くっさー!」ではないかという。
 セリフを当てて再度動画を見たら、笑いが止まらなくなった。自分のオシッコにそこまで驚くなんて、ラッキーハンターの嗅覚はいったいどうなっているのか。
 だって、すごーく臭かったんだもん!
 そんなセリフが聞こえてきそうな気がした。
 新馬時代のエピソードを知ることで、私はラッキーハンターの魅力に益々ますます惹きつけられた。人間が大好きで穏やかな性格で、かといって優等生的というわけではなく、むしろ人に笑いを届ける才能をたっぷりと兼ね備えている。あきらかにラッキーハンターは、人間社会に幸せをもたらしてくれる存在だと思った。
 しかし、彼のファーストキャリアは競走馬だ。
 厳しい勝負の世界で、ラッキーハンターはどのように闘っていたのだろう。そして育ての親ともいえる林さんは、何を思いながらレースに送り出していたのだろうか。


▽写真







林さんのFacebookより 提供:林達郎

(つづく)

片野ゆか

かたの・ゆか●ノンフィクション作家。
1966年東京都生まれ。2005年『愛犬王 平岩米吉伝』で第12回小学館ノンフィクション大賞受賞。著書に『ポチのひみつ』『北里大学獣医学部 犬部!』『ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い』『動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー』『平成犬バカ編集部』『竜之介先生、走る! 熊本地震で人とペットを救った動物病院』『着物の国のはてな』等多数。

『平成犬バカ編集部』

片野ゆか 著

集英社文庫・発売中

定価 814円(税込)

購入する

TOPページへ戻る