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服部孝洋『はじめての日本国債』(集英社新書)を
あきらさんが読む

[本を読む]

「国の借金」がわかればニュースがわかる

 日本国債は日本国が資金調達のために発行する債券で、発行残高はGDPの約2倍の1100兆円を超え、主要先進国で最悪の水準だとされる。さらに、その半分以上の580兆円を日銀が保有している。
 日本の危機的な財政状況の説明としてこれら数字を目にしたひともいるだろうが、それがなにを意味するかを理解するのは難しい。この疑問をこれ以上ないくらいわかりやすく解説してくれるのが、服部孝洋さんの『はじめての日本国債』だ。
 債券は借金の証書で、それが金融市場で売買できるようになっている。債券の値段はそのときどきの経済状況(投資家の思惑)によって変わり、その価格で金利が決まる。債券価格が上昇すると金利は低下し、債券価格が下落すると金利は上昇する。
 これが債券投資の基本で、私もここまでは理解していたが、日銀がなにをやっているのかは、この本ではじめて知ることができた。
 日銀が金融機関から国債を購入するときは、その代金を、金融機関がもつ日銀の当座預金口座に振り込む。とはいえ、日銀は通貨(円)を発行しているので、このお金をどこからか借りてくる必要はなく、会計上の数字としてバランスシートに計上するだけだ。これだけを見ると、魔法のようにいくらでもお金が増えていくように思える。
 だが、世の中にこんなにウマい話があるはずがない。「たくさんあるものは値段が安い」という需要と供給の法則によって、金融市場に国債があふれると価格が下がって金利が上がる。それを防ぐために日銀は市中の国債を大量に買い上げるが、そのことによって当座預金口座の残高が膨れ上がる。当座預金には利息がついているので、金利が上がると支払う利息が増えて赤字になってしまう。
 日銀は民間企業ではないから、債務超過になったり、決算が赤字になっても倒産するわけではないが、日本経済がデフレから「脱却」しつつあるいま、日銀の一挙手一投足はこれからますます注目されるだろう。そのニュースを理解するためにも、この本はものすごく役に立つのだ。

橘 玲

たちばな・あきら●作家

『はじめての日本国債』

服部孝洋 著

発売中・集英社新書

定価 1,100円(税込)

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