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青春と読書×藝大生コラボレーション
第16回は、工芸科3年の作品
きらきらと、心を癒すドジョウたち

[連載]

第16回カバーアーティスト
小林初夏さん

きらきらと、心を癒すドジョウたち

 子供の頃から、きらきら光るものが好きでした。表紙の作品は、うるしの技法を用いて好きな図案を作るという授業で制作したものです。私は〝きらきら〟を軸にしようと思い、自宅で飼っていたドジョウを連想しました。ドジョウというと、泥の中でじっとしているイメージがあるかもしれません。が、水槽の中で泳ぐ姿はとてもきれいで、学校で嫌なことがあったときなどに眺めていると癒され、心が落ち着いていきました。
 作品は、ベニヤ板を土台に、布を貼って漆を何層も重ねています。ドジョウの体は、「螺鈿らでん」や「卵殻らんかく」といった伝統技法を用いて美しく装飾しました。「螺鈿」を使ったのは主に青や紫に見える部分ですが、貝殻の裏側の真珠層を使う装飾なので、貝によって色が異なりますし、光の加減や見る角度によっても輝きが変化します。ドジョウの腹や水槽の白い部分には、ウズラの卵の殻を酢に浸して脱色させた「卵殻」を使いました。
 初めて漆を使ったときはかぶれませんでしたが、半年くらいたつと、かぶれ始めました。過酷で扱いづらいぶん、面白い素材です。たとえば漆は水分を多く含むので人体になじみやすく、肌触りや口当たりがいいから、お猪口やお箸、汁椀に用いられます。そんな魅力ある漆にはまった人間にとって、かぶれは名誉の勲章です(笑)。
 将来的には漆のほかの素材も勉強して、伝統工芸を身近な生活に活かすような仕事ができたらと思って頑張っています。

聞き手・構成=砂田明子/撮影=木内章浩

<藝大生に聞く!Q&A>

Q 好きな本
『魔性の子』(小野不由美 著)、『少年ハリウッド』(橋口いくよ 著)

Q 興味のあること
大樹のうろ、木の生命力

Q 憧れのアーティスト
市川春子、辻輝子

Q 東京藝大はどんな大学か
みなヘンなのが面白い。漆芸専攻は特に偏だと言われるが、息がしやすい場所

Q 今後の展望
伝統工芸を、一点物と量産品の間くらいのもっと手軽で身近なものに戻していきたい

小林初夏

こばやし・しょか●2002年生まれ。
神奈川県出身。東京藝術大学美術学部工芸科3年。
Instagram/@shoka.kobayashi

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