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青春と読書×藝大生コラボレーション
第13回は、工芸科3年の作品
人を寄せ付けない漆の気高さにときめく

[連載]

第13回カバーアーティスト
いわた かなさん

人を寄せ付けない漆の気高さにときめく

 秋の果物、柘榴ざくろをモチーフにしました。柘榴の中には、たくさんの赤い粒(種衣しゅい)が入っています。丸く可愛らしい外側と、グロテスクな内側のギャップが大きく、そんなミステリアスなところに惹かれました。
 明るくてポップなものより、陰があるものやわかりにくいものに美しさを感じます。それは私のなかに、反骨精神があるからかもしれません。
 漆を選んだのも、反骨精神のようなものが影響しています。最初に漆を触ったとき、全身かぶれて病院に行ったんです。痒すぎて眠れず、死ぬかと思ったことで、気に入ってしまいました。人を寄せ付けまいとする漆の気高さに、ときめいたのです。
 表紙の柘榴は、「乾漆かんしつ」という技法で作りました。粘土で原型を作って麻布を貼り、その上に漆を塗ります。麻布→漆を何度か繰り返したら、中の粘土を取り外します。麻布を何枚も重ねているので丈夫、かつ、中がくりぬいてあるので軽い。表面に塗った漆の色味は時間とともに変化していくので、そこも楽しめます。柘榴の種衣は刻苧こくそと呼ばれるものです。漆と小麦粉と麻布の切れ端を混ぜ、丸めて作りました。
 このように、暗さのある、ミステリアスな作品を作りたいのですが、実は私自身はよく喋るし、ぜんぜんミステリアスじゃない。一言で言えば、悪ガキタイプ(笑)。作品と人格のギャップに悩んだりもしますが、これが自分だなあとも思っています。

聞き手・構成=砂田明子/撮影=木内章浩

<藝大生に聞く!Q&A>

Q 好きな本
具体的にはあげられませんが、書店や図書館などにフラっと入って表紙が印象的な本を読むことが多いです

Q 興味のあること
漫画のコマ割り

Q 憧れのアーティスト
憧れといっていいのかわかりませんが、最近一番感動したのは岡本太郎の作品です

Q 東京藝大はどんな大学か
友達がいっぱいできる場所

Q 今後の展望
街を歩いていて不意に声をかけられるくらいの存在になりたいです

いわた・かな

いわた・かな●2001年生まれ。
愛知県出身。東京藝術大学美術学部工芸科3年。
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