[新刊紹介]
加藤一二三・茂木健一郎『ひふみん×もぎけん ほがらか脳のすすめ 誰でもなれる天才脳の秘密』
ひふみんのほがらか名言10選
イラストレーション=いらすとや
写真=高木康行
14歳でプロの棋士となり、「
ひふみんのほがらか名言 10選
いつもニコニコご機嫌なひふみんこと加藤名人。そんなひふみんのほがらか名言を本書からピックアップして茂木さんが分析。天才脳ののびやかな思考回路に迫ります。
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藤井聡太さんのデビュー戦の相手は、じつは加藤さんでした。そのとき、藤井さんの異能ぶりはすでに現れていたそうで、加藤さんは今も藤井さんの将棋を見るとわくわくするとか。藤井攻略法も練っていると言いますから、二人の対局、また見てみたいですね。
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この言葉、いいですね。加藤さんは敬虔なクリスチャンです。でも、さまざまな奇跡を起こしたキリストに対しても角落ちだったら勝てるんじゃないかと考えるところに、加藤さんの勝負師としての真髄を見た思いでした。
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後輩の棋士は、加藤さんから吹っ切る心を学んで強くなったそうです。天才脳には、この「吹っ切る心」が大事なんですね。「型にはまらず、逸脱しつづける」ことで、将棋の世界からバラエティ番組に進出した加藤さんは、まさにそれを体現してる人だと思います。
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加藤さんのトレードマークといえば、対局のときの長いネクタイ。これをすると「自分は今、勝負しているんだ」という意識が芽生えるそうで自己暗示の方法論だったんですね。脳って暗示にかかりやすいので、非科学的なようで、じつは脳の科学に則っているんです。
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加藤さんは、将棋と人生は同じだと考えているんだと思います。もともと将棋や囲碁は、軍事的な戦略のシミュレーションだったことを考えると、そこに全世界があって、宇宙の営みとか、神の御心に添ったものを指したいと思うのは自然なことかもしれないですね。
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プロの棋士は、頭の中でエア将棋ができるということ。すごいですね。また加藤さんは、ご自身の公式戦の対局2505回の棋譜もほとんど頭の中に入っていると言います。さらに単純な記憶だけでなく、ゲームを構築する創造性もあるわけですから、まさに天才モーツァルトと通じるところがあると思います。
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加藤さんは、かつて中原(誠)名人とのタイトル戦でおやつにショートケーキを3つ注文して、全部自分で食べたとか。棋士が甘いものを欲するのは、脳に栄養補給するためでもあります。腸から吸収された栄養によって脳のドーパミンの分泌が活性化され、思考力が高まるんですね。ちなみに中原さんは、ひとつは自分にくれると思っていたらしいです(笑)。
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多いときは19匹の猫を飼っていた愛猫家の加藤さん。猫なで声、猫かぶりなど、「猫」を使ったことわざにはネガティブなものが多いことがご不満のようでした。「うちの猫は賢いし、仲間思いです」と真剣に腹を立てている姿は、かわいらしくて素敵でしたね。
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敬虔なクリスチャンの加藤さん。懸命に考えて指せば、たとえ悪手でも神は喜ばれる─と思い至ってからは大胆に挑めるようになったとか。命運を神の思し召しに委ねる姿勢が、加藤さんの将棋を豊かなものにしたんですね。
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天国は、ただ、ひたすら神を賛美する世界。だから大好きな将棋もないし、大好物のうな重もないだろうと加藤さんはおっしゃいます。でも、加藤さんが将棋を指さないなんて、僕としてはちょっと寂しい気分。ぜひ100歳、110歳と長生きして、いつまでも元気に将棋を指し続けてほしいと願っています。
なごやかで名言続出だった対談の風景。右・加藤さん、左・茂木さん
おふたりからのメッセージ
茂木健一郎
ほがらかで前向きな心の持ちようによって才能を開花させた加藤さん。天才脳の条件をすべて兼ね備えた方です。みなさんも本書で、自分の中に眠る天才に気づいてください。
加藤一二三
対談ではあちこち話が飛んだけれど、「天才脳は気まぐれ」と茂木先生にうかがって安心しました。自由で気ままな発想が脳を羽ばたかせるんですね。これからも私は羽ばたきますよ。
茂木健一郎
もぎ・けんいちろう
1962年10月20日東京生まれ。
脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。クオリア、AIなどを通じ人間の意識を研究。将棋や囲碁に造詣が深く、羽生善治現日本将棋連盟会長との共著もある。著書多数。
加藤一二三
かとう・ひふみ
1940年1月1日福岡生まれ。「神武以来の天才」の異名を持つ名棋士。70年キリスト教徒に。2017年6月20日に現役を引退。仙台白百合女子大学客員教授。18歳3か月でA級昇級の最年少記録は現代の藤井聡太も破れず。著書多数。