[本を読む]
韓国現代史の闇に迫る
解放後の韓国現代史は、一言でいえば「権威主義と民主主義の格闘の歴史」であった。
本書は1970年代から90年代に韓国社会を震撼させた大事件(
以上の事件は、いずれも日本人にとっても馴染み深いものであるが、意外とその真相については、よくわからないことが多い。金大中事件に関してKCIAによる犯行の証拠をつかみながら、国家主権を侵害された日本政府が、なぜ韓国側が提案した曖昧な政治決着を受け入れたのか? 朴正熙大統領狙撃事件について、なぜ日本政府は韓国側の無茶な要求(日本における韓国政府の転覆を狙った北のスパイ活動に対する監視体制を強める)をのまざるをえなかったのか?
このような事件の謎を、本書は背後にある日韓のパワーゲームを紐解きながら、明らかにしていく。その推理と韓国側の一次資料(国家情報院過去事件真実糾明発展委員会『調査報告書』など)を読み込んだ実証分析は秀逸だ。
私が本書を読んで一番驚いたのは、1979年に起きた大統領暗殺事件の真相である。大統領を射殺したKCIAの情報部長が本当に暗殺したかったのは、実は大統領ではなかった。大統領はある意味、ついでに殺されたという著者の大胆な解釈は議論を呼ぶだろう。
また次期大統領の座をめぐる
セウォル号沈没事故や
朴一
パク・イル●摂南大学国際学部客員教授、評論家